ジェレミー・グラント

指揮官ドウェイン・ケーシーとの契約延長を決定

今シーズンのピストンズはデリック・ローズとブレイク・グリフィンを放出し、完全に再建へと切り替えた。

1巡目指名ルーキートリオのサディック・ベイ、アイザイア・スチュワート、キリアン・ヘイズにプレータイムを与えて成長を促すとともに、フリーエージェントで獲得したジェレミー・グラントを新たなエースに据えた。

グラントは過小評価され続けてきた選手だ。2014年のNBAドラフトで2巡目39位でセブンティシクサーズに指名され、全く勝てないチームの若手として3シーズンを過ごした。2016-17シーズンにサンダーに移籍し、フットワークの良さと長い腕を生かして複数のポジションを守ることができ、トランジションにも対応できるロールプレーヤーとしての評価を得たが、その立場はあくまで脇役だ。

昨シーズンはナゲッツへ。ケガ人の穴を埋めてシーズン中盤から主力に据えられ、『バブル』でのプレーオフで攻守に活躍したのだが、このチームの主役はあくまでニコラ・ヨキッチとジャマール・マレーだった。『役には立つが、替えの利く選手』と見なしたグラントがフリーエージェントになると、ナゲッツは再契約を見送った。

この時点ではグリフィンもローズもいたピストンズだが、すでにチーム再建の方針は固まっていたのだろう。開幕から明確にグラントをエースに据え、勝負どころは彼に託した。グラントは平均22.3得点と期待に応える働きを見せたが、厳しく見ればシュート確率は物足りないし(フィールドゴール成功率42.9%)、試合を支配する力を行使できているわけではない。再建に切り替えたばかりのチームを勝たせるのは簡単ではないが、昨シーズンまでのデビン・ブッカーやトレイ・ヤングほどのインパクトは残せていない。さらにはオフェンスに力を入れすぎるせいで、昨シーズンまでのようなディフェンスでの躍動感が影を潜めてもいる。

それでもピストンズにとっては、今後の補強でエースとなる選手を獲得できた際には並び立たせることもできるし、ロールプレーヤーに戻すこともできる。次の一手をどう繰り出すにせよ、グラントは貴重な戦力だ。そしてハードワークを厭わずに自分の成長に日々向き合う彼の姿勢は、冒頭に挙げたルーキーたちに良い影響を与えている。

ピストンズは20勝50敗で、残る2試合に連勝してようやく勝率が3割に乗るという低調ぶりだが、同じくギリギリ3割の勝率だった昨シーズン終了時点に比べれば、今後の浮上に向けた土台作りは大きく進んでいる。だからこそ球団は現地12日に指揮官ドウェイン・ケーシーとの契約延長を決めた。

ケーシーは契約延長のリリースの中で「今いる若手たちは、ピストンズが今後何年にもわたってNBAの強豪に返り咲くための基盤を作るピースとなる。球団が私のリーダーシップの下にチームを任せてくれたことを光栄に思う」と、感謝を語っている。

今シーズンを含む13年間でプレーオフ進出はわずか3回で、すべて1回戦負けと低迷が続くピストンズだが、飛躍のための準備はゆっくりであっても一歩ずつ進んでいる。今オフのドラフト、フリーエージェント、トレードでどんな編成が見られるか、動く余地はたくさんあるチームだけに目が離せない。