負の感情をパフォーマンスアップに繋げる
サンロッカーズ渋谷は週末のレバンガ北海道戦に連勝し、ワイルドカード上位でのチャンピオンシップ進出ラインを維持している。
SR渋谷は現在5連勝中と終盤に勝ち星を伸ばしている。高確率で3ポイントシュートを射抜き、プルアップやドライブからも得点するなど多彩なスキルを持つライアン・ケリーは、この5試合すべてでチームハイの得点を記録したSR渋谷の大黒柱だ。
4月14日の千葉ジェッツ戦では最終クォーターに23得点の荒稼ぎを見せて、チームを勝利に導いた。その試合ではケリーと千葉ベンチがダブルテクニカルをコールされたシーンがあり、その後ケリーは明らかにフラストレーションを溜めながら終始プレーしていた。しかし、ケリーはその怒りを上手くコントロールし、圧倒的なパフォーマンスをみせた。
「確かに感情的になってしまった。選手は自分以外のところ、バスケットボール以外のところに意識が向いてしまうとパフォーマンスが上がらないものだ。でも僕は逆に高い集中力でプレーできたんだ」
ケリーが言うように、審判のコールと戦ったり、怒りで我を忘れた場合、選手の多くがパフォーマンスを落とす傾向にある。こうした状況に陥ったとしても、普段通り、もしくはそれ以上のプレーができることをケリーは証明して見せた。
終盤の大事な時間帯は最も頼りになる選手にボールを託すことが多く、そうした選手は『ゴー・トゥー・ガイ』と呼ばれる。最終クォーターの得点のほとんどがケリーの得点だったため、そう呼ぶに相応しい選手と言える。それでもSR渋谷の伊佐勉ヘッドコーチはケリーがファーストオプションであることは認めたが、ゴートゥーガイではないと持論を語った。
「ライアンがずっとボールを持って、結果的にスコアしてますけど、個人技に頼ったという感覚は僕にはないです。まず、ミスをしないでシュートに行けますし、勝負強いので、大事なところで彼を中心に攻めるという選択肢は一番最初に来ます。ただ、タイプ的にゴートゥーガイとは違うのかなと思います」
「無理にゴー・トゥー・ガイになろうと考えたことはない」
チームのファーストオプションであり、クラッチタイムを任されるのであれば、それはゴートゥーガイと言ってもいいはずだ。しかし、ケリーも「コーチの言っていることは正しいと思う」と同調した。
「僕自身も流れの中で得点をすることを意識しています。状況に応じて、オープンだったらためらわずに打つ、時にはチームメートにパスを出すなど、無理にプレーせず正しいプレーを選択しています。もちろん僕が多くの得点を多く決める試合は多いですが、それはチームが作ったシュート。だから、僕がゴー・トゥー・ガイじゃないというのは正しいのだと思います」
確かに、ゴー・トゥー・ガイの定義にはタフショットでもなんでも、自らが勝負を決めるという思いも含まれている場合が多い。そういった観点からすれば、ケリーがゴー・トゥー・ガイではないのは当然かもしれない。しかし、かなりの確率で出場するであろうチャンピオンシップでは時にゴー・トゥー・ガイの存在が必要になる。
ケリーはそれも分かった上で、自分が「ゴー・トゥー・ガイになる必要はない」と言い、チームの力を信じている。「最後に僕にボールが回ってくることが多いけど、それはチームメートやコーチが自分を信頼してくれているからで、僕がボールを要求しているわけではない。チームで戦っているので、無理にゴー・トゥー・ガイになろうと考えたことはないし、意識する必要もないんだ」
ケリーはトップスコアラーでありながら、チームファーストを貫き、合理的な判断の下プレーしている。このスタイルこそ、ケリーがゴー・トゥー・ガイではない理由だ。
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