「自分でも点が取れるところをアピールしていきたい」
宮崎早織はENEOSサンフラワーズの先発ポイントガードとなり、そのスピードと得点力をフル回転させてチームを引っ張った。日本代表のヘッドコーチ、トム・ホーバスが強化合宿に彼女を招集したのは『順当』に思えるが、本人は「呼ばれるとは思っていなかった」し、さらには「東京オリンピックを目指してはいなかった」とも言う。それでも、大きなチャンスが巡ってきたことは間違いなく、それをつかみ取る強い意気込みでこの合宿に参加している。
昨日、会見に応じた宮崎は「トムさんのやりたいバスケットで自分がどうアピールしたら良いか考えながらやっています」と話した。「スピードは常にアピールしたいですが、それ以上にシュートに力を入れています。ポイントガードとしても、アシストよりは自分でも点が取れるところをアピールしていきたい。ここに呼んでもらった以上、スピードをアピールしたい、シュートが打てるところをアピールしたいというのもあります。ガードは激戦区なんですけど、東京オリンピックのメンバーに入りたい気持ちで頑張っています」
国際試合になれば、高さを含め体格での不利をどう埋めるかが問われるが、今の日本代表のバスケはスピードは当たり前、トランジションに人とボールを連動させ、3ポイントシュートで優位を作りたい。ENEOSで見せている宮崎のプレーができれば、トム・ホーバスのスタイルにもハマりそうだ。
「スピードはどの選手にも日本ではバレているので、その中で意識しているのが緩急をつけること。スピードだけだとついて来られちゃうので、そこを身体の当て方とか緩急の付け方、チェンジ・オブ・ペースは自分の中で工夫しながらやっています」
これまでENEOSでは吉田亜沙美という絶対的なポイントガードがいて、2番手の藤岡麻菜美も評価が高かった。その状況で宮崎は「東京オリンピックを目指してはいなかった」のだが、2020年夏から1年延期となる間に、吉田と藤岡が相次いで現役引退を決めた。ENEOSでその2人の穴を埋めた宮崎が、今度は代表でポジションを獲得してもおかしくないはずだ。
「やっぱりリュウさん(吉田)とネオさん(藤岡)が抜けたのは一番大きかったです。あとは渡嘉敷(来夢)さんがケガをしてしまったり、宮澤(夕貴)さんが本調子じゃないということで、メインになるのが私だったり岡本(彩也花)選手で、自分がやらなきゃいけないことが今シーズンすごくありました。『私がやる、私にやらせて』という気持ちが出てきたことが一番大きいなと思うので、自チームだけじゃなくて代表でもそれを生かしていけたらいいなと思っています」
「自信を持つことは、このチームではすごく大事」
代表でのサバイバルレースはこれから激化していく。これを勝ち抜くためのポイントを「気持ちです」と宮崎は言う。「自信を持つことは、このチームではすごく大事だと思います。一回自信をなくしてしまうと、どんどん上手くいかなくなる環境です。自分じゃなくてもいろんな選手がいる中で、一番は自信を持ってやること。もう一つは自分の持ち味のスピードを出して、どれだけいろいろな人とコミュニケーションを取ってシュートやドライブを出せていけるかが鍵になると思います」
Wリーグのシーズンを通して納得のいくパフォーマンスができたことは、プレータイム確保に苦しんでいた時期にやっていたことが間違っていないという証明にもなった。
「ENEOSに入って7年間、辛いこともたくさんあって、他の選手には負けないぐらいいろいろな経験をしていきているし、それ以上に今シーズンはすごく自信がついたので、残りたい、私を残してほしいと思っています(笑)。宮崎を使いたいと思ってもらえたらうれしい、という気持ちで頑張っています」
エースの渡嘉敷来夢は膝のケガでオリンピック出場が危ぶまれ、ポイントガードのポジションでは吉田と藤岡の引退に加えて本橋菜子も長期戦線離脱から復帰を図っているところ。Wリーグの活躍からすれば、宮崎が代表の戦力となる目処は立つだろう。ただ、今のチーム状況を考えると、彼女には積極的なプレーで代表を引っ張る役割までを担ってほしいところだ。