エンタメ要素は最初からかなり入れました
──FIBAにやる気があったとは言え、日本の受け皿になる決断は簡単ではなかったと思います。実際に手を動かして運営して、マーケットを作っていかなきゃならないわけですから。
安田 でも、この未開拓なエリアであれば先駆者になれるという考えもありました。私たちがいるマーケティング会社としては、新しいマーケットを作ってそこで見えてくるビジネスチャンスはすごく魅力的なんです。
──何もないところからのスタートは大変だったでしょう。
安田 2013年に『3×3 TOURNAMENT.EXE』(一般参加の大会)と『3×3 FESTIVAL.EXE』(体験会)の2つでスタートしました。まずは3人制バスケットボールを競技として楽しめる環境を用意すること。最初は手探りでしたね。まず大会の存在が知られていないし、知らせたとしても競技ルールが分からないので二の足を踏まれてしまう。でもお台場でやった最初の大会では、男子は24チーム、女子も数チーム集まりました。
──『3×3』に馴染みのない人を取り組む工夫としては、どんなことをやりました?
安田 それまでバスケを体育館でやっていた人が大半だったと思うので、屋外で、MCがいて音楽をかけて、というエンタメ要素は最初からかなり入れました。バスケプレーヤーってファッションを気にする人が多いので、そこで面白さを感じてもらって、プレーしてみたら楽しいし、空の下でやるのは斬新だし、ということでリピーターになってくれたり、仲間に声を掛けてくれたり、という流れはありました。
プロ選手は自分を高めるために『3×3』を選ぶ
──その翌年から『3×3 PREMIERE.EXE』を始めています。実際のところ、トップリーグを作るには時期尚早だと言われませんでした?
安田 構想としてトップリーグの立ち上げ計画は当初よりありましたが、コミッショナーの中村考昭に「来年、トップリーグを立ち上げるぞ」と改めて言われた時には、私も「早くないですか?」と言いました(笑)。その時はまだアマチュア大会である『3×3 TOURNAMENT.EXE』が、記者発表はしたけどスタートしていない時期だったので。でも、高いレベルでやりたい人が目指すべき場所を作っていくことが競技の発展につながると考え、「2年目にやるんだ」と、そこから設計を始めました。
──野心的なプロジェクトですねえ(笑)。
安田 だいぶ野心的でした(笑)。しかも『3×3 PREMIERE.EXE』の立ち上げメンバーは私一人だったので。リーグを作るためには何をしなきゃいけないのか考えるところからのスタートでした。規約を作る、シーズンスケジュールや大会フォーマットを決める、プレーヤーをどう集めるか、オーナーの制度設計はどうするか、会場をどう確保するか……ゼロからのスタートです。
──そんな中でこだわった部分はどこでしょう?
安田 今この時代に新たなスポーツのプロリーグを立ち上げる理由やメリットを出す、という部分ですね。マーケットは飽和していると言うか、今の若い人は飽きやすかったり、好みが多様化している中で、従来のNPB(プロ野球)やJリーグの良い点は取り入れながらも、革新的に変えていかないといけないものはある、と思っていました。新しいマーケットに「面白い」と思わせる要素を入れろ、というオーダーが一番難しかったです。
──その結果として形になったものは何ですか?
安田 兼業プレーヤーとプロ選手が半分ずつで在籍していたり、駅前や商業施設など場所の意外性だったり、サラリーマンでもオーナーになれる身近な制度だったり。こういう要素に表れています。
──5人制のプロ選手もたくさん参加しています。栃木ブレックスが『3×3 PREMIERE.EXE』に参戦しているのも面白いというか、ちょっと普通じゃない(笑)。プロ選手にとっての『3×3』の魅力は何でしょう?
安田 選手に聞くと、『3×3』と5対5のバスケでは全然違うそうです。使う能力、判断力、チームの連携プレーとか、個人スキルの比率が高かったりとか。シュートの成功率が勝敗に大きく影響するのでスキルアップにつながるという声も聞きます。ケガのリスクはありますが、シーズンオフのコンディション管理に有効だったり、新しい環境でプレーすることでメンタルを鍛えられるという観点もあるそうです。彼らの場合はお金よりも、自分を高めるために『3×3』をプレーしていますね。
日本のバスケットボールをもっと元気に! 『3×3』という超野心的プロジェクトを探る
vol.1~ 広く親しまれた「3on3」が「3×3」に変貌
vol.2~ 未開拓なエリアにマーケットを作る
vol.3~ 実績が実績を呼んでさらなる流れに
vol.4~ 日本のバスケットボールをもっと元気に!