ジョン・ウォール

マブスとドンチッチを熟知する指揮官の作戦が的中

5連敗中で下位に沈むロケッツと、5連勝中でプレーオフ圏内を維持しつつ順位を上げるマーベリックス。エースのルカ・ドンチッチが絶好調で、2日前の試合では西カンファレンスの首位を走るジャズを撃破したマブスの勝利は固いと見られていたが、終盤に勝負強さを見せたロケッツが102-93で快勝を収めた。

マブスの平均得点は118。これを93に抑えるディフェンスが効いた。これはロケッツを率いるスティーブン・サイラスがマブスのオフェンスを知り尽くしていたことが大きい。昨シーズンまでサイラスはマブスのオフェンシブ・コーディネーターを務めており、ドンチッチの成長に手を貸してきた。試合前の会見では、「ルカは私が今まで見てきた中で、最もインテリジェンスの高い選手だ」と称えるとともに、「彼との経験、マブスでの成功がなければ、私はロケッツのヘッドコーチではなかった」と、マブスへの感謝とリスペクトを語っている。

だが、勝負となれば話は別だ。ケガのダニュエル・ハウス Jr.に代えてケリー・オリニクを先発起用し、クリスチャン・ウッドとともにペイントエリアの高さと強さをカバー。試合のペースを落とすことでロースコアの戦いに持ち込んだ。特にドンチッチへのマークは徹底ししており、インサイドではフィジカルで押し込むプレーを封じ、ピック&ロールに対してはスイッチしながら、ジョン・ウォール、ジェイショーン・テイト、エイドリー・ブラッドリーが常に張り付いてスペースを与えなかった。ドンチッチは23得点を挙げたもののフィールドゴール26本中成功9本(成功率35%)と抑えられ、特に3ポイントシュートは9本中成功わずか1本だった。

サイラスはドンチッチ対策について基本的なディフェンスをしただけと語り、それを遂行し続けた選手たちを称えた。「順位を見て試合をするわけじゃないが、ルカとKP(クリスタプス・ポルジンギス)というスーパースターがいて、よく練られたバスケをする、しかも5連勝している相手に勝てたのだから気分は良いよ。チームの成長を感じられる勝利だった」と満足気な表情を見せる。

同点で迎えた残り2分、勝負どころでエースの働きを見せたのはドンチッチではなくジョン・ウォールだった。オリニクが粘ってオフェンスリバウンドを繋ぎ、マブス守備陣が崩れたところを高速ドライブで一気に切り裂いて勝ち越すと、続くポゼッションではドンチッチのチェックをモノともせずに正面からのジャンプシュートを沈め、ファウルも誘ってのバスケット・カウントで一気に突き放した。ウォールの連続得点で勢いに乗ったロケッツは、ケビン・ポーターJr.がブロックから速攻に走ってダンクを叩き込み、またテイトからウッドへのアリウープ・ダンクとド派手なプレーで勝利をモノにしている。

https://twitter.com/HoustonRockets/status/1379986819589275650

1週間ぶりの復帰となったウォールは31得点7アシスト、特に勝負どころでチームを引っ張ることで存在感を発揮した。「ケガ人が多くて苦戦しているけど、僕たちは互いに信頼し合う良いチームになっている。困難があっても止まらない。20連敗したって戦うことをやめないチームなんだ」とウォールは言う。

「もうプレーオフ進出のチャンスはないけど、2年間プレーできなかったから今は試合が楽しい。このチームは家族であり、大好きな兄弟たちのためにプレーできるんだから最高だよ。僕はこのリーグで11年の経験があるから、みんなの手助けをしたい。ここまでアップダウンがあるけど、みんなで団結して戦い続けるよ」

一方のマブスは、勝たなければいけなかった試合でクラッチタイムに失速。ドンチッチはベンチでペットボトルの水を床に叩きつけ、相当にフラストレーションを溜めているようだったが、試合後の会見では気持ちを切り替え、「誰にだって、どんなチームにだってダメな試合はある。あらゆる面でひどい試合だったけど、そういう日もあるさ」と淡々とした表情で語っている。

https://twitter.com/HoustonRockets/status/1379989271537459205