ジャマール・マレー

オールスターブレイクで緊張の糸が切れ「空っぽに」

ジャマール・マレーは心身ともに疲弊していた。昨シーズンのプレーオフでは驚異的な得点能力を発揮してチームをカンファレンスファイナルへと引き上げ、短いオフを挟んで新シーズン開幕を迎えた。成績が上向かない中で、ニコラ・ヨキッチと彼は序盤戦からフル回転。特にマレーはここに来て調子を上げ、オールスター前の10試合で平均29.5得点、5.0アシストと絶好調だった。

しかし、過密日程のシーズンを突き進んで心身ともに疲労困憊したマレーは、ようやく迎えたオールスターブレイクで「バスケットボールにさわる気にもなれなかった」という時期を迎える。試合が8日間空き、選手には5日間のオフが与えられたのだが、気持ちの糸はいったん切れてしまうと簡単には元に戻らない。ブレイク明けのグリズリーズ戦でマレーは14本のシュートを放って成功わずか1本のみ、3得点と極度の不振に陥った。

翌日のマーベリックス戦でも13本のシュートを放って4本成功の10得点。「プレーする準備ができていなかった。練習で積み上げたことしか試合では出せない。5日間の休みで僕は空っぽになってしまった」とマレーは話す。

それでも、現地15日のペイサーズ戦ではフィールドゴール13本中6本成功、3ポイントシュート3本も決めて16得点を挙げ、アシストも8を記録。チームも121-106と快勝した。スタッツ的にはまだ少々物足りないが、この日のマレーは試合開始前から表情が明るく、チームメートと冗談を言っては笑い、リラックスして試合に臨むことができていたようだ。

「何かを変えなきゃいけないと思って、エネルギーを内に向けるのではなく、外に出すようにしたんだ。いつもは治療に多くの時間を費やすんだけど、今回は考えすぎずにコートに出て、みんなと冗談を言いながらシューティングを楽しむようにした」

「毎日プロであることを自覚して練習に打ち込み、コートに出て多くの人に評価される。疑いの目を向けられたり、嫌われたりする中で、良いプレーができなかったりシュートを外したりする。それがプレーヤーとしての自分に良い影響を与えることもあるけど、ずっと毎日続くのは精神的には大変なんだ。正直、もっと気楽にプレーしたい。できるだけ、そうすることにしたんだ」

彼が抱える問題は根が深い。チームはオフに多くのロールプレーヤーを放出したが、マレーはこれを「ディフェンスのベストプレーヤー4人が抜けた」と表現している。彼自身は肘の故障を抱えたまま試合に出続けている。そしてカナダ出身の彼は、新型コロナウイルスの感染予防による移動の制限により、カナダにいる家族と全く会えていない。そして『バブル』でオールスター級の活躍を見せたことで、それを毎試合やらなければいけない切迫感を持ってプレーしている。

「僕は大丈夫だ。これまでも厳しい状況に立たされてきた時こそ、最高のプレーをしてきた」と話すマレーが本当にメンタル的な疲労から立ち直ったのかどうか、それはしばらく様子を見た上で判断しなければならない。