一昨年に高校バスケ界のタイトルを総ナメにした福岡第一を引っ張ったのは、河村勇輝であり小川麻斗だ。強さとスピードを兼ね備えた河村がリズムを作り、高校生離れしたスキルを持つ小川がそこにアクセントを加える。このバックコートコンビが常に試合を支配したからこそ、インターハイとウインターカップの2冠が実現できた。卒業後の小川は日体大へ進学したが、1年目のシーズンは新型コロナウイルスに振り回され、インカレでは2回戦敗退を喫した。新人戦も行われず、「少し落ち込みました」という小川に機会を与えたのが、彼が生まれ育った地元のチーム、ライジングゼファーフクオカだ。特別指定選手でプレーする機会を求め、あらかじめ大学には許可をもらっていた小川はすぐに決断を下し、B1昇格に向けて戦うチームへと合流した。
「Bリーグでやってみたい、という思いしかありませんでした」
──Bリーグに挑戦することが決まりました。もともと特別指定選手でプレーしたいという気持ちはありましたか?
去年の時点から特別指定でプレーしたいと思っていたので、ライジングからオファーをもらった時はテンションが上がりました。初めてのBリーグを地元の福岡で経験できるのは本当にうれしいです。
インカレが終わった後は新人戦に向けてモチベーションを上げていたんですけど、帰省している間に中止が決まって少し落ち込みました。やっぱり試合がやりたかった気持ちがあったので。でも、それをきっかけにプロの舞台でやりたい思いが強くなって、練習生でもいいから挑戦したいと考えていたので、ちょうどこのタイミングで声を掛けてもらえて良かったです。
──福岡はB2ですが、そこは気になりませんでしたか?
声を掛けてもらえるかどうかも分からなかったのでB1かB2かは意識せず、「Bリーグでやってみたい」という思いしかありませんでした。日体大の監督には特別指定の話があったら行きたいという希望は伝えていて、そこで許可はもらっていました。
──すでに練習には参加しているそうですが、実際に経験するとどんな感じですか?
初めて行った時は今まで感じたことがないようなピリピリした雰囲気を味わうことができました。チーム内の競争が激しく、練習から結構やりあって「これがプロか」と思いました。学生と違うのは練習前の一人ひとりの準備で、もう一つは練習中にチームメート同士でもスタッフともコミュニケーションをたくさん取るところです。みんなが声を出して雰囲気を上げているのが伝わってきました。どちらも僕にとっては必要なことなので、本当に良い経験になっています。
また福岡はディフェンスのチームです。僕は高校からディフェンスが課題で、もっともっと上げなきゃいけないので、ここでディフェンスを強化できるのは良い機会だと思います。まだ少ししか練習はしていないのでこれからですけど、オフェンスの部分で1対1や得点力は通用するのかなって思います。みんな動きが良くて全員に得点能力があるので、アシストもいつも以上にできています。
──特別指定選手といっても、あくまで練習生のような立ち位置の選手と、即戦力としてプレータイムをもらう選手がいます。小川選手はどのようなイメージを持っていますか?
簡単に試合に出れるとは思っていません。ですが、いずれはBリーグでやっていきたいので、少しのプレータイムでも結果を残したいです。それが将来にB1でプレーすることや、日本代表にも繋がってくると思っています。まずはライジングで結果を残し、チームを勝たせられるようなプレーヤーであることを見せたいです。自分が加入したからにはチームが一つでも多く勝てるように貢献したいし、西地区の上位争いをしている福岡を僕がいる間に2位、1位と上げるのが理想です。
「河村に負けないように、自分のペースで頑張ります」
──日体大での話も聞かせてください。大学進学で上京したらすぐコロナで、バスケも生活面も大変だったと思います。
高校の時は福岡第一はもちろん、他にも練習場所があって困ることはなかったんですけど、ウインターカップが終わってから試合が全くできず、大学のバスケがどんな感じかも分からない期間が長くなってしまって、不安は大きかったです。生活面も最初は大変でしたが、最近はだいぶ慣れてきました。食事もたんぱく質を多めに取るとか、工夫しながら自炊しています。得意料理は……鶏胸肉を焼いて食べるぐらいで、これといった料理はできないんですけど(笑)。
一番大変なのは勉強です。コロナに関係ないんですけど、マジで難しくて苦しんでいます。でも、ライジングに加わる前に後期試験を終わらせることができたので一安心です。
──福岡第一で一緒にキャプテンをやっていた河村勇輝選手は、三遠ネオフェニックスと横浜ビー・コルセアーズで2年連続でB1でプレーしています。うらやましいのか悔しいのか、仲間として素直に喜ばしいのか、どんな気持ちで見ていますか?
高校の時から河村はB1でも通用する実力を持っているだろうと思っていました。去年も今年も、プロで活躍する河村を見て悔しいというか「自分は何をやってるんだろう」という気持ちは正直ありました。でも、河村は河村でそれだけ頑張っているわけですし、自分もそれに負けないように、でもあくまで自分のペースで頑張ります。そして今回こういうチャンスをもらえたので、ここで結果を残してB1で河村とこれから戦えたらいいと思います。
──ただ、普通に考えたら大学1年でプロに挑戦する選手は多くないですよね。
河村以外の同級生だと、宇都宮の星川堅信と三遠の兪龍海がいるので、僕で4人目になります。結果を残せるように頑張ります。
──ファンの皆さんに自分のどんなプレーを見てもらいたいか、そして抱負をお願いします。
オフェンスだったら1対1や3ポイントシュートが武器なんですが、ディフェンスがこの1年で上手くなっていると思うので、そこを見てほしいです。大学の試合はコロナもあってなかなか見れなかったと思うのですが、自分なりに成長しているつもりです。地元である福岡でプレーできるのが本当にうれしいので、人数制限はあると思いますけど、是非見に来てほしいです。