「シーズン前半戦の集大成」、千葉ジェッツとの接戦を制す
1月13日に行われた天皇杯3次ラウンド、川崎ブレイブサンダースは千葉ジェッツの爆発的なオフェンス力を封じ込め、ロースコアの展開に持ち込んだ末に72-62で競り勝っている。
佐藤賢次ヘッドコーチは、この試合に向けてチームが懸けた並々ならぬ思いを「今日はシーズン前半戦の集大成と位置づけて準備をしてきました」と表現する。リーグ屈指の名門であり強豪でありながらタイトルから遠ざかっており、満身創痍の状態で優勝まであと一歩のところまで迫った昨年大会のリベンジへの思いもあった。また新型コロナウイルスの影響が大きい中でのホームゲームということで「お客様がアリーナに来てくれて試合ができる、そのことをとても重く受け止めていた。と言いますか『ここでバスケットボールの面白さを伝えられなかったら、もう試合ができない』というくらいの想いで、今日の試合に臨みました」と語る。
試合に懸ける意気込みが強いのは良いことだが、空回りするリスクもある。ただ、川崎は自分たちが徹底すべき激しく、かつ組織立ったディフェンスに意識を集中させることで、気持ちがコート上でのパフォーマンスにそのまま繋がった。
それを体現していたのは篠山竜青のプレーだ。このところ先発を藤井祐眞に譲っており、この試合でも藤井の26分に対して13分と篠山のプレータイムは限られたものになったが、52-55と3点ビハインドで迎えた第4クォーターでの篠山は印象に残る活躍を見せる。その直前にはターンオーバーを連発したが、ミスから意識を切り替えると同時に、攻守にハッスルするスタイルは変えずにチームがやるべきプレーを示した。
「今シーズン、こういう戦いをして勝っていきたいんだ、ということを表現することができた良いゲームでした」と篠山はこの勝利を振り返る。「試合の中で良い時間帯も悪い時間帯もボディーブローを打ち続けることで、最後の5分、3分でしっかりと粘って勝ち切るという、ウチがやりたいプレーを今日は表現できたと思います」
辻直人「自分が結果を出すことでチームのタイトルに繋がる」
ハイスコアで走り勝つ千葉の得意な展開を封じ、激しく粘り強く戦う試合展開に持ち込んだ時点で川崎のペースだった。そこでチームに勝ち切る力を与えたのは辻直人だ。『最後の3分』であるクラッチタイムに辻はハンドラーとして千葉のディフェンスを揺さぶり、そこからチームでボールを回して最後は自分が得点を決めていった。ラスト2分は辻が3本のシュートを立て続けに決めて8得点を挙げ、チームはその間に千葉の得点を許さなかった。
辻は試合をこう振り返る。「なかなか難しい試合だったのですが、僕がミスをしてもみんながカバーしてくれたのをすごく感じましたし、我慢するところは我慢して、本当にチームが一つになって戦って、この勝ちに繋がったなと思える試合でした。リーグ戦でなかなかうまくいかないことも多かったのですが、今日を機に、川崎ブレイブサンダースらしいチームになっていくんじゃないかと自信のついた試合でした」
最後に川崎がタイトルを獲得したのはNBL最後のシーズン。この時、ファイナルでアイシン(現在のシーホース三河)をねじ伏せる辻の得点力は一際目立っていた。「自分が結果を出すことによってやはりチームのタイトルにも繋がると思っています。タイトルは一つでも多く取りたい、という強い思いがあります」と辻は言う。
この勝利はただの1勝ではなく、自分たちのスタイルが間違っていなかったと確認でき、実力への自信を深めるものとなった。この日は米須玲音の加入が発表されて話題を呼んだが、川崎にとってはそれ以上に価値のある出来事だったと言えるはずだ。