サイズとスキルを備え、1対1から得点を重ねる活躍
『Jr.ウインターカップ』男子の初代王者に輝いたのは秋田市立城南中学校だった。2015年に能代工業高校をウインターカップ3位に導いた栄田直宏コーチが個の強さと組織力を融合させたチームは、決勝戦で群馬のNLG INFINITYに90-71で快勝するなど、すべての試合で2桁の点差をつけた。
攻守の要として優勝の原動力になったのが小川瑛次郎だ。決勝での31得点11リバウンドなど大会通算で平均29.2得点、10.8リバウンドを記録したエースは、184cmと中学生世代ではインサイドを担うサイズを持ちながらガードと遜色ないボールハンドリングを備えた1対1からのドライブで得点を量産した。
記念すべき初代王者となり、個人としてもベストファイブに選ばれたことに小川は喜びを語る。「素直にうれしいです。記念すべき1回目で取ることができました。それもチームがあってこそだと思うので、みんなに感謝したいです」
どんどん仕掛ける強気のプレーについては「監督が『お前ならいける』とタイムアウトの時や試合前に言ってくれたので、それで自信がついてどんどんいけました」と続けた。
今大会は中学校、街クラブ、Bリーグのユースとカテゴリーの垣根を超えてチームが集まる、これまでにない新しい大会だが、Bリーグのユースチームは2018年にB1ライセンス取得の必要条件になったことで多くのチームが立ち上がったばかりと歴史が浅い。そういった事情も考慮してか、2018年度から2020年度の3年間については、男子に限りBユースと中学校、Bユースとクラブチームへの重複登録が可能となっていた。そして小川はそのシステムを活用し、城南中だけでなく秋田ノーザンハピネッツU15チームでも練習を行なってきた選手だ。
小川は語る。「ハピネッツの影響でバスケットボールを始めました。小学校3年生の時にハピネッツのアカデミーの練習に参加し、そのままハピネッツを継続しつつ、ミニバスもやっていました」
中学校の部活とユースの練習を掛け持ちすることの難しさは、小川には当てはまらない。「バスケが大好きなので、それはなかったです。ユースでは個の力を学べています。城南中のチーム力を上げるのに、自分の個の力を上手く活用できて良かったです」と自身の成長はユースで得た経験も大きかったと語る。
「チームが一丸となれるのが中学校の強み」
準決勝ではレバンガ北海道U15、決勝ではNLG INFINITYとユース、クラブチームの難敵を撃破できたことに、「出てくる選手はみんなもとても能力があり、とてもハードでしたけど、チームが一丸となれるのが中学校の強みだと思います。それを出すことができました」と、コート外でも一緒に過ごす時間の多い中学ならではのアドバンテージを生かせたと見ている。
お手本にしている選手にアルバルク東京の田中大貴を挙げる小川は「チームをまとめつつ自分でもスコアができるような、リーダーシップのある選手を目指しています」と理想の選手像を語る。
ただ、今大会の彼は、まさにこの言葉のようなプレーを見せてくれていた。Bリーグのユースでより個の力に磨きをかけ、中学ではそれを組織の中でうまく活用していく術を学ぶ。2つのチームをうまく活用して成長を果たした小川の次のステージでのさらなる飛躍に期待したい。