佐藤久夫コーチ「ここ1本のシュートを決められるようになった」
ウインターカップ決勝戦、仙台大学附属明成vs東山の一戦は最後までどちらに勝負が転ぶか分からない接戦となったが、同点で迎えた残り5秒に山﨑一渉がミドルシュートを沈め、明成が頂点の座をつかんだ。
山﨑は「あまりシュートが入っていない状況で、(佐藤久夫)先生がボールを持ったら勝負に行っていいと言ってくださったので、それで自信が湧いて最後にシュートを決めきることができました」と、勝負を決めたラストショットを振り返った。
山﨑が言うように、決してシュートタッチは良くなかった。3ポイントシュートは12本中3本の成功に留まり、フィールドゴールは30本中10本の成功と低調だった。それでも、強い気持ちを持ってシュートを打ち続け、結果的に決勝ゴールを沈めた。
佐藤コーチは「一渉が約2年の中で良くなったのは、ここ1本のシュートを決められるようになったこと。50点も60点も取らなくていい。絶対に入れなきゃいけないシュート、それが決められるようになってきたのが私も非常にうれしいです」と、山﨑の成長について語った。まさに山﨑の2年間の積み重ねがラストショットの成功を生んだのだ。
同点で迎えた最後のオフェンスは、山内ジャヘル琉人か山﨑のどちらかで攻めると決まっていたという。山内は試合開始から第3クォーター途中まで13本連続でシュートを落としていたが、終盤にシュートタッチを取り戻し、ディフェンス面でもチームを勢いづける決定的な仕事をしていた。チームに逆転の機運をもたらしたのは山内であり、彼にラストショットを託す選択肢もあったが山﨑は「強気でいこうと思って自分が打ちました」と、自分が攻めることにこだわった。それは、3年生から指導され続けてきた『エースの自覚』を体現した瞬間だった。
「まだ塁さんほど、自分が中心になってやれていなかった」
佐藤コーチが認め、山﨑も「3年生がいたからこの優勝があると思います」と語ったように、今年のチームを引っ張ってきたのは間違いなく3年生だ。山﨑の実力は一級品だが、しばしばメンタルの弱さを指摘されてきた。その弱さを克服できたのは、声をかけ続けてきた3年生の存在が大きい。山﨑は心からそう思っているからこそ「最後の大会で恩返ししたいと思っていたので素直にうれしいです」と笑顔を見せた。
「エースとしての自覚が足りていないところを3年生には心から向き合ってもらいました。自分がダメでも、何度も何度も声をかけてもらって、ボールを持ったら勝負にいけと言ってもらいました」
ウィザーズの八村塁にあこがれ、山﨑は明成の門をたたいた。ウインターカップ優勝を成し遂げたことで、偉大な先輩に近づいたが、「まだ塁さんが明成にいた時ほど、自分が中心になってやれていなかったです」と、満足はしていない。
頼りになる3年生はこれで引退となり、これからは最上級生になる山﨑がチームを背負うことになる。すでにその覚悟はできており、先を見据えている。「まだチームの柱になりきれていないので、プレーでも精神面でもチームの中心選手になりたいです。来年は全国の舞台で力を出し切れるようにして、また優勝したいです」