栗原貴宏

文=丸山素行 写真=バスケット・カウント編集部、B.LEAGUE

東芝ブレイブサンダース(川崎ブレイブサンダース)一筋のキャリアにおいて、先発やシックスマンなど役割はシーズンごとに変われど、常に代えの利かない選手だった栗原貴宏。その栗原が移籍を選択したことに驚いたファンは多いに違いない。新天地、栃木ブレックスで早々にプレシーズンの準備をスタートさせた栗原に話を聞いた。

「ひたすら多摩川沿いを走ってました」

――栗原選手の移籍はサプライズ移籍でした。8シーズン在籍した川崎を離れることに迷いはなかったのでしょうか?

年齢的なこともあって、迷いはありました。でも、リーグがプロになったことで移籍に対する思いが前向きになったのはあります。ずっと社員で7シーズンやっていて、社員となると「ここにずっと残ってやるんだろうな」という考えでした。プロになりその保証がなくなったことで、移籍に対する考え方が広がりました。別のバスケットをやってみたいという思いもありましたし、環境を変えることが良い刺激になるという思いもありました。

――環境という意味では、川崎は自前の体育館があっていつでも練習ができるなど、リーグの中でも恵まれた環境があったと思います。

そうだとは思いますが、いつでもできる分、練習が終わってダラーンとしてしまう時も出てきます。こっちは自前の練習施設がない分、短く決まった時間で集中して練習するようになります。練習して、ウェイトしてと、メリハリがあって生産的です。

やっとチームに合流したのですが、あっちでは体育館が使えなかったのでひたすら多摩川沿いを走っていました。自宅でトレーニングをしたり、外を走ったりしてボールは使えてなかったので、練習にもより身が入ります。

栗原貴宏

期待と不安で「ぐちゃぐちゃです(笑)」

――栃木への入団を決意した一番の決め手は何だったのでしょうか?

「ディフェンスはもちろん、オフェンスでもうちょっとできると思うんだよね」と話をしてくれたことです。ディフェンスのことを言われるのは分かっていたんですけど、オフェンスも期待すると言ってくれたので、栃木が僕を必要としてくれている感じが伝わり、新しいところで挑戦したいという思いになりました。

――では、栃木では具体的にどんなプレーが求められるのでしょうか?

3番へのディフェンスですね。遠藤(祐亮)選手だと足はあってもミスマッチになる場合があるので、そこで頑張ってくれたらとは言われました。千葉(ジェッツ)戦では遠藤選手が富樫(勇樹)選手にマッチアップしたりするので、そうなると小野(龍猛)選手を守れる人がいなくなりますし、そういったところも言われましたね。

――栃木としては3番のサイズアップという面で最適な補強となったと思います。初めての移籍をして始動した現在の心境は、期待なのか不安なのか、どのようなものですか?

ぐちゃぐちゃです(笑)。このチームにちゃんとマッチできるか不安もありますし、新たな楽しみもあるし、本当にぐちゃぐちゃですね。しっかり一日一日を大切にして、練習を重ねて自信がついてくれば、良いイメージにつなげられると思います。

栗原貴宏

「ファンの一体感がすごかったのを覚えています」

――栃木とは過去に何度も死闘を繰り広げてきたと思いますが、対戦相手としての栃木にはどんな印象を抱いていましたか?

本当に嫌でした。僕がルーキーで入った頃にプロチームだったのは栃木と(レラカムイ)北海道だけで、その時に初めて栃木のホームに行った時に、ファンの一体感がすごかったのを覚えています。当時の東芝のホームゲームはお客さんの人数が多くなかったですし、いっぱいいる栃木の応援は嫌でした。オフェンスも勢いに乗ってワーと盛り上がり、どんどん良いほうに持っていく力があるので、ホームの勢いにやられて大きい点差から逆転負けしたことも何度か経験しています。敵として見たら本当に嫌でしたよ。

――そんな強敵が今度は味方になりますね。

本当に頼もしいです。自分も早くその一員になりたいという思いが今は強いです。

――チーム、ファンと一体になるためにも、まずは結果を残さないといけないですね。では最後にそんなファンの方たちへ抱負をお願いします。

ディフェンスは一番やらなきゃいけないことなので、そこからチームを盛り上げていきたいです。ディフェンスと一言で言ってもルーズボールもあるし、リバウンドで身体を張ったりとかもあるので、そういったところでチームに良い流れを持っていきたいです。みんなでボールを共有するチームだと思うので、インサイドアウトをしたり、キャッチ&シュートや3ポイントシュートには自信があるので、そこでプラスアルファの勢いを持たせられるようにしたいと思っています。