ファクンド・カンパッソ

セカンドユニット充実、昨シーズンを上回る成績に期待

プレシーズンを戦うNBAチームの中でも特に好調ぶりが目立つのがナゲッツだ。ウォリアーズに105-107で敗れ、トレイルブレイザーズに126-95で勝っているが、注目すべきは結果ではなく内容だ。ニコラ・ヨキッチとジャマール・マレーの2枚看板はまだ調整中の感が強く、本領発揮はレギュラーシーズンが開幕してからになるだろうが、このチームの課題だった選手層を分厚くする意味で、昨シーズンのカンファレンスファイナルに貢献できなかった選手、新加入の選手のパフォーマンスが目立つ。

右ひざを痛めて『バブル』への参加を見送ったウィル・バートンが戦線復帰。昨シーズンはケガをするまで不動のスターターだっただけに、ベンチから出る役割に戸惑いながらも、ハードワークに加えてプレーメークのできる持ち味を発揮している。『バブル』序盤は活躍したがプレーオフでは出番の限られたボル・ボルやPJ・ドジアーも、短いプレシーズンでアピールすべく気合いの入ったプレーを見せており、ブレイザーズ戦でのボル・ボルは6分という短いプレータイムで10得点6リバウンドを記録した。リバウンドは自分のいるところに落ちてきたラッキーが重なったが、10得点は果敢なアタックで相手守備陣を押し込んだ結果。プレーオフでは好調なチームにあって『スローインを邪魔する役割』しか与えられない屈辱を味わったが、今シーズンは違うはずだ。

経験豊富なジャマイカル・グリーンは計算できる戦力で、良い意味で計算外なのが昨シーズン途中にロケッツを解雇されたビッグマンのアイザイア・ハーテンシュタインだ。プレシーズンの2試合で見せているのは7フッター(213cm)の長身ながら献身的に走る姿勢と、加入したばかりにもかかわらずパスワークに絡む起用さ。メイソン・プラムリーが務めていたヨキッチの控えはそう簡単に見つからないと思われたが、ハーテンシュタインがフィットしそうだ。

そんなナゲッツでも最大のサプライズになりそうなのが、ファクンド・カンパッソだ。アルゼンチン代表のポイントガードとしてワールドカップのファイナル進出に貢献。ヨーロッパでのプレー経験も長く実績は十分だが、181cmと身長が低いことと、NBAのスタイルに順応できるかどうかが懸念された。ただ、それはプレシーズンの2試合で払拭されている。

スピードに乗ったボールプッシュから、腕をブン回す長い距離のパスをピタリと味方に合わせてチャンスを演出。サイズのなさは重心の低いドリブルというプラスに変える。エネス・カンターの背後、足元からヌッと表れるようにボールを奪い取り、一瞬の判断でバックスピンをかけたパスでファストブレイクを出したプレーは、カンパッソらしさが詰まったものだった。

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加入時点で『infobae』の取材に応じたカンパッソは、自身のNBA挑戦に際しての懸念についてこう語っていた。「バスケは背が高いアスリートの世界だから、僕みたいな選手には疑念を持つのが普通だ。そんな意見と長年戦ってきたけど、今はちょっと考え方を変えている。僕のプレースタイルが好きじゃない人もいる。その意見も尊重するけど、僕は自分らしいスタイルでプレーし続けるよ。少なくとも僕の周りには、僕のプレーに興奮して価値を見いだしてくれる人がいるからね。これまでもそうしてきたから、いずれNBAのバスケに適応できると信じている。今の僕は適応できるかどうかじゃなくて、それに要する時間をいかに短くするかに集中しているんだ」

「ペニャロールからマドリーに移籍した時も最初は3番手だったから、今回も上手く行くと信じている。不安よりも期待の方が大きいよ。通用しなかったらどうしようと不安になるんじゃなく、マディソン・スクエア・ガーデンのコートに立つ気分はどんなものだろうか、って考えたらワクワクするよ。どんな挑戦であれ、僕はビビったりしない。NBAに行くからといって自分のDNAは忘れない。ルーキーだから優勝したいって言うのは大袈裟かもしれないけど、このチャンスを楽しむつもりだ」

そんなナゲッツのスターター争いは過熱している。ポイントガードはマレー、センターはヨキッチと、立場が安泰なのは両エースのみ。パワーフォワードはベテランのポール・ミルサップがいるが、実績ではグリーンも負けていないし、ボル・ボルも先発はないにしてもプレータイムを大きく伸ばすと期待される。スモールフォワードはバートン不在の間に『バブル』で評価を上げたマイケル・ポーターJr.が今のところ先発。シューティングガードはギャリー・ハリスが先発で2番手にドジアーという状況に、カンパッソが入ってくることになりそうだ。

カンパッソは2番ポジションでの起用が有力。NBAでもトップクラスのシュート力を持つマレーと一緒に出る時にはボール運びとディフェンスの負担を担い、果敢なドライブを武器とするモンテ・モリスと一緒ならゲームメークの比重を高くする。これで彼の言葉のように「自分のDNAを忘れず」フィットできそうだ。

昨シーズンのプレーオフで驚異的な勝負強さを見せたナゲッツだが、選手層に厚みがないことで苦しい戦いを強いられ、最後はレイカーズに圧倒された。スタイルは変えず、各ポジションで層が厚くなった今、再びリーグの頂点を目指す。