3ポイントシュート全盛時代、引く手あまたの状況
ダービス・ベルターンズはこの1年で選手としての評価を大いに高めた。ラトビア出身でヨーロッパで活躍した後、2016-17シーズンにNBAデビュー。スパーズの3シーズンはあくまで脇役として過ごしたが、昨年のウィザーズ移籍が転機となった。オフェンス重視のチームにおけるシックスマンとして、これまでで最長となる平均29.3分のプレータイムを得ると、15.4得点と活躍。1試合平均8.7本の3ポイントシュートを放ち、42.4%の高確率でこれを沈めた。
彼にとっては4年契約の最終年。自身のキャリアを左右する大事なシーズンに持てる力を発揮できたのは大きかった。『バブル』でのシーズン再開に加わらなかったのは、大きな契約を前にケガや新型コロナウイルス罹患のリスクを避けたかったからだ。
3ポイントシュート全盛の今のNBAで、27歳とまだ若く、身長208cmとサイズがあって守れるシューターの彼は重宝される存在。バード権を持つウィザーズと好条件での新契約にサインした上でのトレードで、新天地へと移るはずだ。
その有力な候補となるのがセルティックスだ。カンファレンスファイナルでヒートに敗れたセルティックスの泣きどころはシューターだった。ケンバ・ウォーカー、ジェイソン・テイタム、ジェイレン・ブラウン、ゴードン・ヘイワードにマーカス・スマートと主力は揃って3ポイントシュートの打てる選手だが、彼らはスペシャリストではない。ダンカン・ロビンソンやタイラー・ヒーローのように勝負どころで3ポイントシュートをねじ込むシューターは、勝負を決める爆発力をオフェンスにもたらすと同時に、チームメートのためにスペースを広げて中で勝負しやすい状況を作り出す。オールラウンダーが揃うチームだけに、ベルターンズのようなスペシャリストが1枚加わる効果は大きい。
サラリーキャップに余裕のあるチームとして、ホークスも移籍先の候補となる。20勝47敗で東カンファレンス14位と振るわなかったホークスだが、トレイ・ヤングを中心に若いタレントが揃う。ロケッツから加入したクリント・カペラを始めケガ人が戻ってくればプレーオフ進出を争う戦力は十分にある。29.6得点、9.3アシストという驚異的なスタッツを残したヤングのドライブと得点力、そこからのキックアウトのパスを考えれば、ブラッドリー・ビールのパスを受けて得点を量産した今シーズンの再現が期待できる。
また、ブレイクスルーの場所となったウィザーズにこのまま残るのも手だ。エースであるブラッドリー・ビールの残留が大前提にはなるが、ビールとベルターンズが残留し、ジョン・ウォールが復帰して、八村塁やトーマス・ブライアントといった若手が成長すれば、ウィザーズは数年前の強さを取り戻せるはず。恐らく他のチームのどの選手と組むよりも、ビールとの相性は良いはず。ビールとウィザーズが残り2年の契約を全うするのであれば、これにベルターンズが乗るのも『アリ』だろう。
いずれにしても、ベルターンズは契約最終年に目に見える成果を出してフリーエージェントの権利を得た。今の彼は選ぶことのできる立場にいる。新型コロナウイルスの影響でスケジュールが例年と違い、経営的にも難しいタイミングになってしまったが、彼は自分の持てる権利を行使すればいい。果たして、彼はどのチームを選ぶだろうか?