ヤニス・アデトクンボ

ドンチッチ&ポルジンギスとの超強力『ユーロトリオ』

NBAファイナルはレイカーズの勝利で幕を閉じ、これから各チームは来年1月に開幕される予定の2020-21シーズンに向けた編成を本格的に進めることになる。

2年連続シーズンMVPに輝いたヤニス・アデトクンボは、このオフにバックスとスーパーマックス契約を結べる資格を手にしている。球団への忠誠心が強く、地元のファンからも愛されている彼は、NBAでプレーするチャンスを与えてくれた球団で生涯プレーする可能性が高い。

しかし、何がどう転がるか分からないのがNBAのビジネスだ。そしてミルウォーキーという小規模なフランチャイズであることが、その忠誠心を揺らがせるかもしれない。カンファレンスセミファイナルの後、「バックスでは勝てないのではないか」との疑いが彼の頭をよぎらなかったと言えば嘘になるはずだ。フロントの力量を信じられないとしたら、決断のタイミングは今オフだ。

バックスがスーパーマックス契約を提示してもアデトクンボが応じなかった場合、バックスは1年後にフリーエージェントとなった彼に出て行かれるより、今オフに超大型トレードで何らかの見返りを得ることを考えなければならなくなる。アデトクンボ級の選手を獲得するには、来シーズンの彼の年俸2750万ドル(約29億円)に見合うだけの条件を提示しなければならないため、トレードを持ちかけられるチームは限られる。またトレードで獲得できたとしても、彼が1年後にフリーエージェントになって移籍してしまうリスクもある。

もし来年オフにアデトクンボがフリーエージェントになれば、マーベリックスが最有力候補になると『ESPN』が伝えている。

現段階でマブスの2021-22シーズンの総年俸額は8400万ドル(約88億円)弱。サラリーキャップの設定額次第ではあるものの、アデトクンボと契約する余裕がないわけではない。もし本当に獲得できるのなら、NBAの名物オーナー、マーク・キューバンが高額なラグジュアリータックスを支払ってでも獲得を実現させる可能性だってある。

『バブル』でのマブスはルカ・ドンチッチ、クリスタプス・ポルジンギスの『ユーロデュオ』の可能性を示した。2人ともまだ若く、これからさらに成長するだろうが、それでもプレーオフ1回戦で敗れたクリッパーズとの力の差を考えると、また王者レイカーズとの差を考えると、優勝するにはさらなる補強が必要だ。

アンソニー・デイビスはレイカーズと再契約する可能性が高く、レブロン・ジェームズはまだ数年はトップコンディションを維持しそうだ。西カンファレンスで彼らを上回るには、これぐらいのインパクトのある編成ができなければ勝算が見えてこない。アデトクンボがスーパーマックス契約に応じてバックス残留を決めれば話はそれで終わりだが、それまでは優勝を狙うチームにとって何としてでも成し遂げたい補強の選択肢となる。

ポルジンギスとアデトクンボはどちらもパワーフォワードでポジションが重なるものの、いずれもシュート、アシスト、ブロックと器用にこなせるタイプのビッグマンで、同時起用でも上手くいきそうだ。ルカ・ドンチッチとの相性も抜群だろう。ドンチッチとポルジンギスの息の合った連携からの攻めは恐るべき破壊力を秘めていたが、そこにアデトクンボという選択肢が増えたら、オフェンスの威力は絶大となる。ディフェンスも、ポルジンギスとアデトクンボが待ち構えるゴールをこじ開けるのは至難の業だ。

とにかく、すべてはアデトクンボの決断次第。万が一、彼が契約延長に応じなければ、NBA全体が揺れ動く大騒動になる。