ドワイト・ハワード

「すべての時間で全力を、いやその上の110%を尽くした」

「人生は浮き沈み。常に良いことばかりじゃない。前にレイカーズに所属した時には、謙虚になること、成長のために努力することを学んだ。このチームに戻って来ることができて、僕は本当にうれしかったんだ。今回は家族、そして自分自身をがっかりさせるわけにはいかなかった。コート、ロッカールームで過ごすすべての時間で全力を、いやその上の110%を尽くしたつもりだ」

そう語ったのはドワイト・ハワードだ。2004年のドラフト全体1位指名選手であり、かつてはNBA最強センターと呼ばれたハワードも34歳になり、身体能力任せのプレースタイルでは年齢による衰えが目立ち、もはや大舞台での活躍はないと思われていたが、レイカーズで見事な復活を遂げた。開幕前にデマーカス・カズンズが大ケガを負ったことで、彼にチャンスが舞い込んだ。素行の悪いイメージがあり、レイカーズでコービー・ブライアントと良い関係を築けなかった過去もあったが、彼は自らレイカーズに無保証契約を申し出ることで契約へとこぎ着けた。

ドラフト全体1位指名、オールスター選出8回、5度のリバウンド王、3度の最優秀守備選手賞という輝かしい実績を捨て、契約だけでなくプレータイムも役割も保証されない立場で「チームのためなら何でもする」と宣言。派手なプレーを封印し、ゴール下でディフェンスを支え、レブロン・ジェームズとアンソニー・デイビスをサポートする役回りに徹した。

新型コロナウイルスの影響でシーズンが中断し、再開する前にはアメリカにはびこる人種差別問題へのアプローチを優先するため、『バブル』に参加しない意向を明かしていたが、悩んだ末にチームに再合流した。変幻自在のラインナップの中で起用法は最後まで固定されなかったが、プレーオフでは特に難敵のナゲッツとのシリーズで、ニコラ・ヨキッチを抑える重要な役回りを担った。優勝を決めたファイナル第6戦こそプレータイムは1分のみだったが、それでもプレーオフを通してのインパクトは大きい。

全盛期に数々の栄光を手にしたハワードだが、NBA優勝という最大のタイトルは今回が初めての経験。エゴを封印し、チームプレーに徹した長いシーズンの最後に、欲しかった栄冠を手にした。優勝セレモニーを終えて、シャンパンでお祝いをした後の記者会見だったが、彼は「夢に見た瞬間だったけど、まだ実感がない」と言った。

「数年前に『俺はチャンピオンだ』と言ったら笑われたよ。それはNBA優勝じゃなく人生の優勝という意味で言ったんだけどね。とにかく誰にでも失敗はある。それでも耐えて、また立ち上がるのが大事なんだ。自分で立てた目標に向かって努力して、優勝できた。チャンスをもらえたこと、そして優勝できたことに感謝している。レイカーズの仲間たちと優勝を祝うのは最高の気分だ。今夜は眠れないだろうね」

マジックに在籍していた2009-10シーズンにもNBAファイナルを経験しているが、前回はレイカーズに敗れた。「昨日のことのように覚えているよ。ジャミア(ネルソン)と『もうこんな悔しい思いはしたくない、必死で努力しよう』と話したんだ。勝つのはいつだって大変だけど、ファイナルで勝つのが一番大変だ。久しぶりのチャンスだったし、みんなで一丸となって成し遂げようとした」

「僕だけじゃない。チーム全員が大変な経験をした。チームメートは僕が『バブル』に参加すると聞いてすごく喜んでくれた。僕がその決断をしたのは、みんなをがっかりさせたくなかったからだ。レイカーズ入団を決めた時、このチームのため、この球団のためにベストを尽くすと約束した。その目標を達成しないままシーズンを終えることはできなかったんだ」

「僕個人としても、素晴らしい経験ができたと思う。ずっと忘れない、ずっと語り継がれるような経験だった」とハワードは言う。しかし、家族と離れて『バブル』でずっと過ごす生活はタフだったはず。ただ、それももう終わりだ。会見で終始ニコニコしていたハワードだが、「これでバブルから出られるよ!」と言った時に一番の笑みを見せた。