レブロン・ジェームズ

オフボール対策とカウンターを狙うレイカーズのゾーン

レイカーズとヒートの顔合わせとなったNBAファイナル。ともにディフェンスの良い選手を並べるのが特徴ですが、プレーオフではゾーンディフェンスがキーポイントになって勝ち上がってきました。それぞれ明確な狙いを持ったゾーンをしてくるだけに、ここでの攻防が試合展開を大きく左右しそうです。

レイカーズは基本的にはゾーンをしないのですが、ロケッツとのシリーズではオフボールムーブに陣形を崩されないため、またトランジションオフェンスへの移行をスムーズにするためにゾーンを取り入れてきました。ある程度は攻略されることを前提としながらも、ハイプレッシャーからのスティールと、レブロン・ジェームスのリバウンドからのワンパス速攻が主な狙いです。マンツーマンからゾーンへの切り替えを、ディフェンスが機能しない時の立て直し策ではなく、ハーフコートオフェンスで困ったケースでの打開策として使ってくるのが面白いところです。

3-2のゾーンはレブロンかアンソニー・デイビスがインサイドのカバーに来るために設定されており、鉄壁のリムプロテクトで強固なブロックを形成します。ヒートのオフェンスは、バム・アデバヨがボールを持つとアウトサイドでもインサイドでも周囲がオフボールムーブで合わせてくるだけに、レイカーズはロケッツ対策と似たようなイメージでゾーンディフェンスを使ってくるのではないでしょうか。

一方でレイカーズのゾーンの弱点はコーナーへのキックアウトパスにあり、特にヒートには高確率で3ポイントシュートを決めるダンカン・ロビンソンがいるだけにリスクも伴いますが、カウンター狙いのレイカーズはキックアウトパスを『敢えて出させて』奪うオプションも使ってきます。ヒートとしても弱点の両コーナーにシューターを配置するとトランジションディフェンスが弱まるだけに、どちらがリスクを負った判断をするかに注目です。

柔軟に狙いを変え、選手交代を難しくするヒートのゾーン

ヒートはシーズン中から頻繁にゾーンを使っており、2-3で固定された形を採用しているものの、『2』の方にジミー・バトラーやジェイ・クラウダーを配置して、様々な狙いをもった多様な守り方をしてきます。基本は強力なディフェンダーでトップ近辺からの3ポイントシュートを打たせないことを狙いますが、レブロンが相手となるだけにドライブ優先で少し引いたゾーンを採用することになるのではないでしょうか。

ヒートのゾーンはヤニス・アデトクンボにすら突破を許さないほど強力に中央を固めることもあれば、セルティックスのパスアウトを狙ってくるなど、同じ形から違う戦略に切り替えられるのも強みです。個人の強靭なフィジカルでインサイドを固めることも、豊富な運動量でアウトサイドにもチェイスすることもできるため、一律的な攻略法がありません。

ただし、弱点らしい弱点がない代わりに全員が動き回るため、小さなスキは生まれやすく、また運動量優先の選手起用により単純な高さに弱い面もあります。レイカーズはインサイドのギャップを使うビッグマンを起用するか、それともアウトサイドのシューターを増やすか、試合ごとに選手の調子も見極めながら起用法を変えていく必要がありそうです。

手の内の読み合いが続くファイナルでは、ゾーンディフェンスを使うことは単純な攻防だけでなく、相手の選手交代を制限することにも繋がります。トータルでメリットを生みだすために、両ヘッドコーチは様々な作戦を検討しているはずです。

特にヒートのエリック・スポールストラは、同じゾーンディフェンスに見えても多様な狙いをもった仕掛けを用意してきます。ヒート時代にともに戦ったレブロンの特徴は知り尽くしているだけに、策士スポールストラが『レブロン対策』をどれだけ持っているかは、試合展開を大きく左右しそうです。