文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

「ディフェンスからしっかり走るのは変わらない」

快勝に終わった韓国代表を迎えての第1戦を終え、比江島慎はチームの変化をこう語る。「やっぱりインサイドで点が取れることで、彼らのフォーメーションを意識して。苦しい場面でも一度インサイドに入れる形ができ、そこでうまく点を取れています。ピック&ロールにしてもニックだったらポップしてスペースも空けてくれますし、塁なら速いダイブができますし、そこは変わってきています」

エースとして日本代表を引っ張ってきた比江島の目から見ても、ニック・ファジーカスと八村塁は歓迎すべき戦力アップだ。エースである比江島は韓国との初戦ではファウルトラブルもありプレータイムが15分と伸びず、3ポイントシュート1本を含む7得点に終わっている。「僕はそんなに点を取っていませんが90点近く取っていますし、そこはもう本当に楽というか、自分ももっとディフェンスに専念もできるというか。そこは良いところだと思います」

ただ、フロントコートに絶対的な実力者が加わったとはいえ、比江島が日本代表で長くプレーする中で築いてきた『エースの自覚』に変化はない。「ラマス監督からは比江島メインというか、いつも通り起点になってくれと言われていたので、今まで通りエースとしての自覚を持ってやろうと思っていました」と比江島は言う。

それは自分のことだけでなく、チームのスタイルにも言える。「アーリーオフェンスの持って行き方は変わらないと思うし、インサイドのセットプレーが増えたのはもちろんありますけど、基本はディフェンスからしっかり走るのは変わらないと思います」

実際、ファジーカスと八村が加わったからといって、これまで機能していた部分を捨てる必要はない。アップテンポな展開から比江島の1on1というオフェンスは、Bリーグでもファジーカスの多彩な得点能力に引けを取らないインパクトがあった。何も犠牲にすることなく、持てる武器をすべて生かしてこそ、上のレベルが見えてくる。

韓国との第1戦はファウルトラブル「ここからです」

もっとも、比江島はファウルトラブルで不完全燃焼。「最初ちょっと受け身になりました」と反省しつつも、「もうないです。今日も集中していたつもりなんですけど、ディフェンスからしっかり行きます」とミスを繰り返さないことを誓った。

立ち上がり、動きの良いファジーカスと八村にボールを集めている間に比江島はファウルトラブルになってしまった。当然、手応えは「全然です」との答え。「自分としては本当、納得できないです。リズムは悪くなく、15分の中で自分の持ち味はちょっとは出せたので、ここからです」と語る。照準を合わせるのはあくまで6月29日のワールドカップ予選、オーストラリア戦だが、今日の韓国との第2戦では比江島とファジーカス、比江島と八村のケミストリーを見せてもらいたい。