文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

デビュー戦で17得点7リバウンド4アシスト2ブロック

日本代表が抱えてきた様々な課題を一気に解決してしまった、そんな印象さえ持たせる日本代表の快勝だった。全体的なサイズ、高さやフィジカルの問題は、どうしてもインサイドの4番、5番ポジションで顕著になる。日本はこの部分の弱点をなかなか解消できなかったのだが、八村塁の出現は、少なくとも印象の上では、そのすべてを解決させてしまった。

苦しい時間帯に打開する個人能力、エースとしての風格を感じさせるパフォーマンスを披露した八村は「チームも始まったばっかりでやってることも少なかったんですけど、チームとしてもこれからのために良い出だしになったんじゃないかなと思います」とコメント。フィールドゴール14本中7本成功の17得点、7リバウンド4アシスト2ブロックという数字以上に、攻守にダイナミックなプレーはインパクトがあった。それでも自分のパフォーマンスについては「それが自分の持ち味なので、その通りやっただけ」と涼しい顔だ。

「アンダーでも世界と戦ってきたんですけど、日本代表のトップでやれている、すごい先輩方とやれているのは楽しいです。始まったばかりなんですけど、チームでも僕たちの持ち味が出せたんじゃないかと思います」

デビューしたばかりの20歳。すでにエースとしての風格が感じられるのはアメリカで日々揉まれてきた自負があるから。「こういう状況で選手たちも練習が始まったばっかりなんですけど、そういう中で僕がチームをプレーで引っ張っていけるような選手になりたい」

パワフルなプレーを支えるのは「気持ちとか闘争心」

コースト・トゥ・コーストからのユーロステップでの美しい得点、プットバックダンク、ブロックショットとド派手なプレーで大田区総合体育館を沸かせた八村。それ以外にもミスマッチを逃さず簡単に背中でゴール下まで押し込んでの得点、ディフェンスとリバウンドなど、何気ないプレーまで圧巻のクオリティだった。

とにかくパワフル、とにかくダイナミックな代表デビュー戦となったが、やはりその秘密はアメリカの世代のトップレベルで生き抜くために得た身体の強さ、フィジカルなプレーへの対応だ。アメリカで学んだことを問われた八村はこう答える。「身体の使い方、コンタクト受けながらシュートを入れるとかそういうところもありますし、気持ちとか闘争心とかそういうところも上がってるんじゃなかなと」

期待は高まるばかりだが、「それは外でやってることなんで」と八村は気にしていない。「チームの中では僕も一人の選手です。そういう中でチームメートとやれるのがすごくうれしいです」

八村が何度か触れたように、チームは始まったばかり。ニック・ファジーカスと八村が加わってチームとして機能させるにはまだまだ時間が必要だし、連携を高めればもっともっと高いパフォーマンスも期待できる。逆に言えば6月29日、ワールドカップ予選のオーストラリア戦までにチームとしての完成度をどこまで高められるかが重要となる。

明日は高校時代を過ごした仙台で「楽しみです」

日本代表は強烈な武器を手に入れた。昨年のU-19ワールドカップで日本代表でもその実力は十分に証明していたが、伸び盛りの八村はそれから1年での強烈な成長を遂げていた。アメリカでの経験が彼に大きなプラスになっているのと同様に、期間は限られるとはいえ日本代表での経験も彼の成長をまた後押しするだろう。

明日は高校時代を過ごした仙台に舞台を移しての国際強化試合第2戦。「久しぶりに仙台でやるということで、3年間お世話になったところなので楽しみです」と八村に気負いはない。底知れぬ才能が加わって激変するAKATSUKI FIVEから目が離せない。