「GAME7と言っても僕たちにとっては次の試合にすぎない」
優勝候補クリッパーズとカンファレンスセミファイナルで対戦しているナゲッツは、1勝3敗で迎えた第5戦からの連勝で、ジャズとのファーストラウンドと同様に『GAME7』を戦う権利を勝ち取った。
この第6戦は、終盤にニコラ・ヨキッチが攻守に圧倒的なパフォーマンスを見せた。ディフェンスでは3ポイントラインまでチェイスしたかと思えば素早くゴール下も固めてクリッパーズのオフェンスを断ち切り、攻めに転じれば3ポイントシュートを次々と沈める。213cmの長身から繰り出す3ポイントシュートは止めるのが難しい。彼は6本中4本と高確率で3ポイントシュートを決め、自分にマークが集中すれば巧みなステップでプレッシャーをかいくぐってはパスをさばいた。
特に終盤の勝負どころで、カワイ・レナードがマークについた時に強引に攻めず、コート上の敵と味方の位置を冷静に見極めて効率の良いオフェンスを組み立てたクリエイト能力は際立っていた。それでいて高難易度のターンアラウンドからのジャンプシュートもねじ込むのだから、手が付けられなかった。
そのヨキッチは、自分のプレーを楽しんでいた。「大事なのは楽しむこと。このチームでは誰もプレッシャーを感じていない」と彼は言う。「コーチからも『楽しんでこい』と言われていたし、第4クォーターを迎える時点でチームとして良いプレーができていたので雰囲気は良かった。自信もあった」
振り返れば、ナゲッツは昨シーズンのファーストラウンド(vsスパーズ)、カンファレンス・セミファイナル(vsトレイルブレイザーズ)でも『GAME7』を経験している。結果だけが求められる試合ともなれば重圧でガチガチになってしまう選手も少なくない中、今シーズンのナゲッツは、ジャズとのシリーズから負けられない状況になってからの試合で5連勝をマークするなど逆境に強い。プレッシャーに潰されず、プレーを楽しめているからこそ、土壇場で自分たちの力が発揮できるのだろう。
あと1つ勝たなければ意味はないが、それでもヨキッチは「これまでのようにゲームを楽しむつもりだ」と余裕を持っている。
「まずはGAME7に向けて心と身体の準備を整える。でも、GAME7と言っても僕たちにとっては次の試合にすぎない。コートに出てプレーするだけさ」
第6戦で鼠蹊部を痛めたジャマール・マレーの状態が気がかりだが、ヨキッチは「あいつは肋骨が折れていてもプレーする。本当に深刻なケガをしない限りプレーする選手だよ」とエースを評している。
難敵スパーズを退け、3勝1敗からブレイザーズに逆転された昨シーズンの経験があるからこそ、ナゲッツはプレーオフの試合でも楽しめるようになったのかもしれない。若いチームではあるが、プレッシャーのかかる試合の経験は十分に踏んでいる。『火事場のクソ力』でクリッパーズを相手に逆王手をかけたナゲッツの快進撃がどこまで続くか。この『GAME7』がNBAプレーオフの歴史に残る一戦になることを期待し、結果を見届けたい。