取材=森いずみ 協力=シアトル日本商工会(春秋会)

「オリンピック前に皆さんからパワーをもらえたら」

7月16日土曜日、シアトルのベルビューカレッジにて、WNBAシアトルストームに所属する渡嘉敷来夢をオリンピックに送り出すため現地の商工会主催による壮行会が開かれた。

100名を超える参加者を前に、渡嘉敷はこう挨拶した。「今まではMVPを取ったり、優勝することが多かったんですけど、アメリカではそう簡単にはいきません。チームも優勝から何年か離れていたり、自分も今年は試合に出れない状態が続いているんですが、でもそれも自分にとってはプラスになっていると思っているので、オリンピック前に皆さんからパワーをもらえたらと思っています!」

1年目のシーズンは、WNBA新人ベスト5にも選出される文句なしの活躍を見せた渡嘉敷だが、今シーズンは苦戦が続いている。21試合を終えてスタメン出場はゼロ。スタッツも大きく落としている。ドラフト1位で加入したブリアーナ・スチュワートに、主役の座を奪われた形だ。

だがそれは承知の上で引き受けた試練だ。渡嘉敷は言う。「今年はドラフト1位のすごい選手(ブリアーナ・スチュワート)が入り、それを知った上でまた契約しました。プレータイムも大事ですが、他のチームに行くよりも、そういう選手と一番近くで、一緒に練習できることが自分にとってプラスになると思ったので。それも今は一つのモチベーションとしてやっています」

「誰だってミスはするし、うまくいかないことはある」

バスケットボールファンと言うよりも、シアトル在住の家族連れが多く集まったこの会は、いたってアットホームな雰囲気だった。参加者との質疑応答もほのぼのとした内容。日本からシアトルに来てホームシックになってしまったという女の子からの「寂しくないですか」という質問に渡嘉敷は、「自分が何のためにアメリカに来ているのかがはっきりしているので、寂しいから誰かにいてほしいというより、寂しくてもやらなきゃいけない、という感情のほうが強いです」と回答した。

「ポジティブで強い女性である渡嘉敷の、その強さの根源がどこにあるのか」という質問が投げ掛けられると、渡嘉敷はこう答えた。「4年前にケガをしたんですが、それまではすごくネガティブでした。練習でミスしたりうまくいかないと、結構落ちていたんです。ケガをしてリハビリしている時、『プレーしている時にもっと思いっきり一日を楽しんでいればよかった』と後悔しました。それで、誰だってミスはするし、うまくいかないことはあるのだから、ミスしたら次にどうするかが大事になってくると気付いて、そこからポジティブになれました」

渡嘉敷は続ける。「あとは自分自身を信じることです。どんなことがあっても『自分はできる!』と思っているし、もっと上を目指したいので。自分が自分を信じないと、何も始まらないと思います」

質疑応答の後は抽選会で参加者との交流。シアトルストームのTシャツ、ボール、色紙が配られた。来場したファンからエールを受け、最後は来場者が作ったアーチをくぐり、「シアトルの日本人代表として、頑張ってきます」と、会場を後にした。

渡嘉敷は来たるべきリオ五輪への抱負をこう語っている。「オリンピックでは日本代表が目標としてる『メダルへの挑戦』というスローガンを胸に、アメリカでやってきたことを自分らしく、最高の舞台で出せたらと思っています。応援よろしくお願いします」

7月17日のシカゴ・スカイ戦を最後に、渡嘉敷はシアトル・ストームを離脱して日本代表に合流する。いよいよ本番、今シーズンのWNBAは不完全燃焼の状態が続いているが、その分もリオで爆発してもらいたいものだ。