文=丸山素行 写真=バスケット・カウント編集部

兄と語った「ここに行きたい」が現実に

史上最年少で日本代表候補入りを果たした田中力は昨日、横浜・ビー・コルセアーズと進学先であるIMGアカデミーとの合同記者会見を行った。

錦織圭がテニス留学したことで知られているIMGアカデミーは、スポーツに打ち込める環境が整っているだけではなく、勉強の両立も求められる。田中は以前から「勉強が不安」と漏らしていたが「今になればそんなことを思っても仕方がないですし、頑張るしかないので。今は不安はないです」と期待に胸を膨らませている。

田中にはエリート選手育成を目的とするNBAグローバルアカデミーからの誘いもあった。それでも「IMGのほうがレベルが高いし歴史もあるので。IMG出身のNBA選手もいるし、NBAアカデミーは1年目なので、歴史のあるIMGを選びました」と実績と歴史を重視したことを明かした。

またIMGアカデミーへの進学は子供のころの夢だったことも明かした。「バスケを始めて、お兄ちゃんと動画を見ていてIMGが出てきました。IMGのチームが本当に強くて、いつかここに行きたいなって話してたんです」

IMGアカデミーへの進学を公にした4月初旬、田中はIMGからのオファーに対し「断る理由がない」と話していた。その言葉の裏にはこうした兄との夢の話が隠されていたのだ。

「今はアシストのほうが好きです」

神奈川県代表として戦った昨年のジュニアオールスターでは、準決勝の東京戦で43得点、決勝の長崎戦で34得点を記録するなど、その高い得点能力が脚光を浴びた。以前からボールハンドリングを長所に挙げ、シュート精度を高めたいと話していたが、現在はアシストに喜びを見いだしているという。「最近はレベルの高いところでやると、アシストのほうが気持ち良くなってきました。得点も取ったらうれしいんですけど、今はアシストのほうが好きです」

田中のアシスト能力の高さは、IMGアカデミーでバスケットボールディレクターを務めるブライアン・ナッシュも認めているという。「日本では得点力とかで僕のこと知ってますけど、ナッシュには『パスがうまいと思う。パサーとして周りを生かせると思うから頑張ろう』と言われたので、ちょうど今意識してやってます」

中学ではチームの総得点の半分以上を挙げていたが、田中は決してセルフィッシュな選手ではない。ガンガン1対1を仕掛けていくプレースタイルはチームが勝つために必要な行動だった。「これまでは自分が得点を取らなきゃ負ける試合がありました。パスをしたい気持ちもありましたけど、中3の時はそこに頭が回らなくて、勝つことに精一杯で得点ばかりでした」

「中学を卒業してバスケIQが少し上がりました。冷静にパスと得点をバラバラにすれば、プレーの幅も広がって、自分の得点も楽になると思います」と言うように、真のオールラウンドプレーヤーとして成長していくに違いない。

「日本人でも頑張れば行けるじゃん」

田中は日本代表に選出され、日本を強くしたいと語った。そして、それと同時に『日本人はバスケが下手』というイメージを払拭させたいという強い思いを抱いている。

「日本人ですと言うと、『日本ってバスケできるの?』とか、ダンクしたら『日本人って跳べるんだな』とか言われたりしたので。日本は下手な国じゃないのに、なんでこんなこと言われるんだろうと思っていたので。それが悔しくて、強いイメージにしたいです」

それを証明する一番の方法は、田中がずっと目標にしているNBA選手になる夢を実現させることだ。そして、田中より先に海外でプレーしている先輩の名前を挙げ、こう締めくくった。

「八村(塁)さんとか、渡邊(雄太)さんもドラフトにかかると思います。彼らがNBAに入って、もし僕も入ったら、日本人でも頑張れば行けるじゃんっていう気持ちになるのかなって思います」

NBA選手になるという大いなる夢を追いかけ渡米する田中。最高の環境で研鑽を積み、今よりも一回りも二回りも大きくなって、日本を代表する選手になってもらいたい。