デュラント、アービングとの関係構築にも自信
スティーブ・ナッシュがネッツのヘッドコーチに就任したのは、寝耳に水の出来事だった。ケビン・デュラント、カイリー・アービングが中心のチームを元MVPのナッシュが率いるという構図は、非常に夢のある話だ。それと同時に、これまでヘッドコーチとしての経験がゼロのナッシュが、いきなり2020-21シーズンの優勝候補に挙げられているチームをまとめられるのか、という意見もある。
ナッシュは先日『ESPN』との電話インタビューに応じ、以前から指導者としてのキャリアを歩むことを密かに考えていたと明かした。「指導者になりたい気持ちはあった。ただ、これまでは自分の中だけに留めていた。自由な時間があったし、コーチを探しているチームのレーダーにかからないようにね」と指導者転身について語ったナッシュだが、ネッツ指揮官就任を決めた要因の一つは家族だという。
「指導してみたいと思っていたが、それをやらずに来た理由は家族のことがあったから。幸いにもバスケットをプレーした現役時代には多くの時間を得た。その時間を子供たちと共有したかったし、できるだけ子供たちに影響を与えたかったんだ」
「今回の決断は、家族としての決断でもある。この仕事を追い求め、情熱を傾けられるかどうかを考えた時、すべてのチェック項目が埋まった。子供たちにとっても、ブルックリンのような歴史ある街を見られるのは素晴らしい機会になる。旅から学べるものもあるし、環境の変化からも学べる。自分の殻を破って新しい環境に身を置くことで学べる」
ウォリアーズの選手育成コンサルタントを2016年から19年まで務めたナッシュは、デュラントと良好な関係にある。ナッシュも「僕たち2人はバスケットボールを愛している。彼との関係も良くて、先生と生徒以上の関係性だと思っている」と言う。
「現役を引退した後に彼とワークアウトしていたし、ウォリアーズ時代には一緒に仕事をした。バスケットボールにおいて、彼との間には信頼関係がある。それは非常に大事なこと。僕が見てきた中でもっとも偉大な選手の一人だし、彼に信頼してもらえるのも重要なことだ」
デュラントとともにチームを引っ張るアービングとも、ナッシュは以前から関係を築いていたという。「カイとはお互いにポイントガードという間柄だけではなく、私のお気に入りの選手の一人でもある。たしか2015年だったと思うけれど、彼とはニューヨークのジムで一緒に汗を流した。私に対する敬意を感じられたよ。カイとの関係性も重要だ。彼がチームのポイントガードで、私がコーチという立場になる。彼の人間性を以前より知ることができるのだから、とても楽しみだ。彼のプレーや考え方を知ることができるし、天から与えられた彼のギフトを磨く手伝いをしたい」
ナッシュはネッツのヘッドコーチ就任発表前に何人かに連絡を取り、自分の口から報告していたという。デュラントとアービングとも話す機会があり、「僕たちは一緒に仕事ができることに興奮している」と、新チーム始動前に良好な手応えをつかんでいる。
ネッツにはデュラント、アービング以外にも成長著しいキャリス・ルバートやジャレット・アレン、経験豊富なスペンサー・ディンウィディー、ディアンドレ・ジョーダン、シャープシューターのジョー・ハリスらも所属している。まだ噂レベルの話だが、オーランドの『バブル』参加前にチームと契約した大ベテランのジャマール・クロフォードとも再契約する可能性もある。ナッシュは豊富な戦力について「才能に溢れ、万能性に優れている選手が多い。今のロスターを与えられて感謝している」と語った。
ロスターと同じくらい大事なアシスタントコーチ陣は未定だが、『ESPN』によれば2019-20シーズン途中から暫定ヘッドコーチを務めたジャック・ボーンはアソシエイト・ヘッドコーチとしてチームに残るという。
新米ヘッドコーチのナッシュは、スタッフの重要性も理解している。「僕はコーチとしてはルーキーだ。指導者としての経験はないに等しい。僕にあるのは選手としてプレーした経験、試合について考え、チームを引っ張った経験だけ。これから勉強しないといけないし、疑問を持ち、答えを見つけ、自分の方針に合った戦術を見つけないといけない。ただ、自信はある」
「選手と仕事をするのは大好きだ。すぐに選手から信頼してもらえるかは、この競技、チームに対する僕の情熱を理解してもらえるかどうか次第。彼らがポテンシャルを最大限に生かす姿を見たい」
現時点では不安要素も少なくない。とはいえ、誰もが認める名ポイントガードだったナッシュ自身が「自信はある」と言う以上、彼のチームがどういうプレーをするのかを楽しみに待ちたい。