取材=丸山素行 構成=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE、野口岳彦

「準備してきたところと1年間の練習の差が出た」

富樫勇樹は負けず嫌いだ。だからこそ、身長のハンデを覆してBリーグのトッププレーヤーへと成長し、千葉ジェッツのエースになることができた。

Bリーグファイナルでアルバルク東京に完敗を喫した後も、その『負けず嫌い』は発揮された。「今日の試合でも相手の方がしっかり準備をしていて、1年間の努力を敵ながらも感じました」と『ハードワーク』を軸とするA東京のタフなバスケットを称え、優勝セレモニーを「素直におめでとう、という気持ちで見ていました」と語りながらも、「1年間の努力を敵ながら感じたので、来年こそ僕らが見せる番だと思います」と早くも来シーズンのリベンジを口にした。

結局のところ、相手の激しく、かつ統率の取れたディフェンスを崩せなかったのが敗因だ。司令塔にしてスコアラーでもある富樫にとっては悔しい負け方だが、「準備してきたところと1年間の練習の差が出たと思います」と完敗を認める。

「チームとして今日は全く良くない、千葉らしさがない、40分間ほとんど自分たちのリズムが出せませんでした。そこは相手のディフェンスを褒めるべきだと思いますし、それに対してできなかったことを、今後成長しなきゃいけない」

「この1試合でこのシーズンを判断されたくない」

それは『千葉の攻めとA東京の守り』という単純な構図ではない。「ブレイクを警戒された以上に相手が良いシュートでオフェンスを終えていたことで、こっちがなかなか走れませんでした。相手のオフェンスをこっちのディフェンスで崩せなかった。それが敗因だと思います」

ボールにプレッシャーを掛けることはできたが、A東京の組み立てはそれを上回った。「同じプレーを今シーズン続けてやっているので、どう対応されたらどこが空く、ということを全員分かっていました。スペーシングを含めてレベルの高いバスケットだと分かっていましたが、その部分で対応しきれなかったと思います」

「ルカヘッドコーチの下で代表で一緒にやっていたので、練習強度もそうですし、1試合の準備が徹底していることも知っています。それを1年間、アルバルクの選手は努力してきて、その自信を今日の試合ですごく感じました」

優勝を決めたライバルを素直に称えるが、だからと言って自分たちのシーズンがすべてダメだと見なすわけではない。そこは1試合の結果ではブレない自信が、チーム全体にも富樫自身にもある。「この試合は20点以上で負けましたけど、次の試合は20点差で勝つ可能性もあるチームですし、この1試合でこのシーズンを判断されたくないという気持ちはあります。もちろん優勝できなかったので満足ではないですけど、それでもプレシーズンも合わせてこのチームで80試合くらいを戦ってきたことに関しては、チームメートのことを誇りに思います。チームとして良いシーズンを送れたと思います」

だからこそ、「今日に関しては全く決められなかった自分の責任」と7得点に終わった自分のパフォーマンスを悔やむ。勝つ時もあれば負ける時もある。今日はアルバルク東京が勝つ日だった。新シーズン、来たるべき『その日』を勝つ日にするため、富樫勇樹はまた一歩を踏み出す。