文=丸山素行 写真= B.LEAGUE

「練習が足りなかった。すべては準備不足です」

富山グラウジーズは横浜ビー・コルセアーズとの残留プレーオフ2回戦に76-79で敗れ、入れ替え戦に進むことが決定した。

最終クォーター残り15秒で3点ビハインドの場面、タイムアウト明けのオフェンスで富山が選択したのは大塚裕土の3ポイントシュート。このシーンを大塚はこう振り返る。「ボードプレーでコーチが描いたやつです。もうちょっとデックス(ピットマン)のスクリーンがかかってフリーな状態で打ちたかったというのはあります。でも僕らはそういう練習が足りなかったので、だからすべては準備不足です」

高島一貴へのスクリーンがうまくかかりきらず、両手でシュートチェックを受けながら放った大塚の3ポイントシュートはリングに弾かれた。マークを振り切れなかった以上、シュートを打たずにもう一度オフェンスを組み立てるという選択肢があったが、大塚は自分の仕事を全うした。

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「時間的にも3点必要だったので。前の横浜戦でも3ポイントを決めてましたし、シューターなので入らなくても打つのが仕事なので。シーズンを通して良い確率で決めていて、そこは自分としては自信を持っているところなので、結果として外れましたが、迷わず打ったということは今後につながるかと」

シュートを打って正解だったと大塚は言う。それは同時に、次善の策が準備できていなかった結果でもあり、準備ができていれば違った選択、違った結果があったかもしれない。「基本的にシーズンを通して競った試合はたくさんありました。それで勝てないというのはそういう練習が足りないという結果です。来週は切り替えて出だしからリードして勝てるように。それしかないので」

富山の武器となった大塚の3ポイントシュート

今シーズン、サンロッカーズ渋谷から移籍してきた大塚は富山で確固たる地位を築いた。3ポイントシュートの成功率は39.7%を記録。100本以上の3ポイントシュートを決めた選手の中ではリーグ2位の数字だ。

「3ポイントの確率がリーグでも上のほうを保てたというのはかなり自分の中では大きいです」とレギュラーシーズンの活躍を振り返った。日増しに他チームのマークが厳しくなっていく中でこれだけの数字を残せたのは、もちろん努力の賜物だ。「例えば三河の金丸選手とかは毎シーズンタフにディフェンスされても、それでもスコアしてます。だからもらい方の部分で色んなところを真似たり、そういったところは怠らずにやってきたので」と大塚は胸を張った。

また平均出場時間も平均30分を超え、昨シーズンの10.9分から約3倍に跳ね上がった。プレータイムを求めて選手が移籍するケースはよくあるが、ここまでの伸び率は稀であり、飛躍できた理由を大塚はこう話す。

「去年渋谷にいてなかなかプレータイムもらえない中でも自分で時間を作って、出た時の準備をシーズンを通して1年間腐らずやっていたので。昨シーズンの1年は苦しかったですけど、そういうのがあって、自分のステップアップになりました。今後もどんどん自分を伸ばしていきたい」

「B1としてタフに戦ってきたシーズンの財産」

いよいよ今週末、富山はB1残留を懸け熊本ヴォルターズと入れ替え戦を戦う。レギュラーシーズン60試合プラス残留プレーオフ、タフな状況が続いてるが、泣いても笑ってもこれが今シーズン最後の試合となる。大塚はB1のプライドを持って戦うと意気込む。

「天皇杯で秋田(ノーザンハピネッツ)に負けてますし、B2のチームにはもう負けられない。宇都がいないという状況でも、B1としてタフに戦ってきたシーズンの財産が僕らにはあるので、そこはプライドを持って戦っていきたいです」

天国と地獄、明暗がはっきりと分かれる入れ替え戦。富山のB1残留には、今シーズン飛躍を遂げた大塚の最後のステップアップが求められる。