チーム解体を決断したクリッパーズ、その内情が明らかに
NBAロゴのシルエットに使われたと言われている往年の名選手、ジェリー・ウェスト。現役時代は抜群の勝負強さを誇ったことから『ミスター・クラッチ』の異名で知られ、1972年にレイカーズの優勝に貢献した。
引退後は指導者、フロントを経て、2011年にウォリアーズのチームアドバイザーに就任。『王朝時代』の礎を築いた人物として知られている。そのウェストが、1年前にクリッパーズのアドバイザーに就任したことはあまり知られていない。
ウォリアーズは、代理人を経てGMに転身したボブ・マイヤーズの手腕により、ウェストが築いた土台を生かして黄金期を作り上げた。マイヤーズの決定がすべて上手く機能している今、ウェストは去り際と判断した。そんな時にクリッパーズからオファーが届き、ウォリアーズとの契約が満了となった後、新天地にロサンゼルスを選んだ。
アドバイザーに就任して最初の大仕事は、今年の1月下旬に成立したブレイク・グリフィンを含むピストンズとの大型トレードだった。『New York Times』によれば、ウェストはクリッパーズオーナーのスティーブ・バルマーに「必要だと思うなら、タフな決定を恐れるべきではない」と助言したという。
ウェストはグリフィンの放出をこう振り返っている。「誰もやりたがらない仕事だった。特にスティーブはブレイクを個人的に気に入っていた。全員にとって非常に難しい判断だった。それでも、この球団は行き詰まっていたんだ。行き先なんてどこにもなかった。目的地からどれだけ離れてしまっているのか気づく必要が、どうすればたどり着くのか知る必要もあった」
1年前に5年1億7100万ドル(約189億円)のスーパーマックス契約を結んだグリフィンの放出により、クリッパーズはこの1年間でクリス・ポールとグリフィンという昨シーズンまでの看板選手を失った。そして今オフにフリーエージェントの権利を取得する生え抜きのディアンドレ・ジョーダンも移籍が濃厚となっている。
チームを解体したクリッパーズにとって、今後数年は我慢の時になる。幸い、今年のドラフトでは全体12位と13位の指名権を保持しており、トップ選手の指名は難しくても、スカウトが正しい評価を下せば、『第2のドノバン・ミッチェル』を引き当てることだって可能だ。
79歳と高齢ではあるものの、ウェストには長年の経験と勝負勘がある。強豪ぞろいの西カンファレンスを制するチームを作るには、しっかりした基礎作りが必要。ウォリアーズ時代と同様、ウェストが今後数年でチームの土台を築き、それから若くて有能な人材を登用し、勝てるチーム作りを推し進めれば良い。チーム設立から48年間、優勝どころかNBAファイナル進出も果たせていない球団を勝てるチームに作り変えることこそ、ウェストの生き甲斐になっている。
数年後にクリッパーズが再び西の強豪としてリーグを盛り上げる時、ウォリアーズを去った時と同様に、ウェストの功績が称えられるはずだ。