「シリーズは1試合ごとに切り替える」
試合ボイコットによる中断を挟み、NBAは8月29日からプレーオフを再開させた。ここ数日で誰よりも心身の消耗が激しかったのは、選手会長として事態の収束に奔走したサンダーのクリス・ポールだろう。
ポールは選手会の代表として選手たちの意見をまとめ、リーグ、オーナー側との折衝に当たった。一時はシーズンボイコットという最悪の可能性もあった中で無事に再開に漕ぎ着けられたものの、彼はサンダーのリーダーとしてチームを引っ張らなければならず、ロケッツとのプレーオフ・ファーストラウンドに向けて気持ちを切り替えなければならなかった。
2勝2敗のイーブンで迎えた第5戦は、この日好調だったデニス・シュルーダーとPJ・タッカーが退場処分を受けた第3クォーターにロケッツが37-18とリードを拡大し、勝負は決まった。若い選手の多いサンダーは立て直せず、経験の差によりこの試合を落とした。
もう負けられない状況に追い詰められたサンダーだが、試合後のポールは落ち着いていた。「これはただの1試合。シリーズでは1試合ごとに切り替えてやる。今日と同じようにシュートを打つだけ」
騒動後の初戦を迎えた心境について聞かれると「プレーできて良かったよ」と答えている。「ここ数日は、ウチも対戦相手も感情的になることがあった。正直に言って、プレーできて良かった。ただ、試合が終われば切り替えて次に臨むだけ」
今後はリーグ、そして各球団が社会正義の実現に向けて、これまでよりも関連する活動に力を入れることで合意している。ポールは今後も重要な役割を担うようになるが、今は一人の選手として、リーダーとして、チームを勝利に導くことだけを考えている。