ジャマール・マレー

「ミッチェルとの勝負を楽しんでいる」

西カンファレンス3位のナゲッツは、プレーオフファーストラウンドでジャズに1勝ち3敗と追い詰められていた。この『バブル』に来てチームリーダーとしても大きな成長を見せるドノバン・ミッチェルを止めることができず、先勝したものの3連敗。ナゲッツは持ち味である人とボールが連動するオフェンスが機能せず、窮地に追い込まれていた。

そうして迎えた第5戦、ティップオフから3分半で10点のビハインドを背負う。ミッチェルは1対1では止められず、かといってダブルチームに行けば空いた選手へとパスをさばかれ、フリーで3ポイントシュートを打たれた。それでも第1クォーターを1点リードで終えられたのは、ニコラ・ヨキッチが個人技で上回ったからだ。5本の3ポイントシュート成功、クォーターの最後をブザービーターで締める21得点でナゲッツが先手を取った。第2クォーターからはジャマール・マレーがそれに続いた。

しかし、タフショットをねじ込むナゲッツと、チームオフェンスで良いチャンスを作るジャズでは後者が優位だ。ジャズはミッチェルを起点に最初のズレを生み出し、スムーズなボールムーブでナゲッツのローテーションを振り切ってフリーを作り出す。ナゲッツはアタックに行って攻め切れなければ、そこからパスを出す相手を探す状況で噛み合っていなかった。

これは第2戦からの3連敗で常に見られた状況。ナゲッツの攻めはマレーとヨキッチ、シックスマンに回ったマイケル・ポーターJr.の3人に極端に偏り、他の選手はシュートに行く回数が少ない。タフショットでこじ開けてはいたが、試合を通じて決まり続けるものではない。

だが、この試合でのマレーはそれをやり遂げた。前半は9得点だったが第3クォーターに18得点、第4クォーターに15得点と手が付けられない。すべての攻撃はマレーから始まり、そのほとんどで彼は自らのフィニッシュを選択した。外していたら、負けていればセルフィッシュだと批判されるプレーだが、決めれば決めるほど調子を上げ、最終クォーターにはクラッチシュートを連発した。最後の最後、残り24秒に相手ディフェンスを引き連れてリムにアタックし、右コーナーで待つヨキッチの3ポイントシュートをアシスト。これがジャズを振り切る決定打となり、117-107でナゲッツがシリーズ成績を2勝3敗とした。

「僕の内面から湧き上がってくるものがある。ただ勝ちたいという気持ちだ」とマレーは試合後に語る。「僕が一生懸命プレーすれば、みんなついてきてくれる。それがこのチームの本質だ。得点だけじゃなく、試合に集中して指示を出し、チームの足並みを揃える。僕らは勝ち方を知っているから、次の試合も楽しみだよ」

強引すぎるオフェンスだが、彼はチームでの勝利を強調する。「みんな僕だけに集中するけど、僕だけじゃない。シュートを決めるのは僕だけど、オフェンスで意思統一ができているからこそ、相手を揺さぶり、連続で得点することができる」

マレーとミッチェル、両チームのエースが絶好調であることが、このシリーズを難しく、面白いものにしている。「意識はしていないつもりだけど、気付かないわけにもいかないよ」とマレーは笑う。「ミッチェルとの勝負を楽しんでいる。だけどジャズはドノバンだけに注意すればいいチームじゃないし、大事なのは勝つことだからね」

質の高いバスケットをしたのは間違いなくジャズだが、それで勝てるとは限らないのがまた面白い。攻守のバランスを崩していても、個人の力で勝ち切る力がナゲッツにはある。今後もマレーとヨキッチがチームを引っ張っていくだろうし、その間にバランスの修正ができれば状況はさらに良くなる。

もっとも、ジャズがまだ優位にあることに変わりはない。この試合ではヨキッチに始まり、マレーが引き継ぐクラッチプレーの連発に屈したが、彼らがひどいゲームをしたわけではないからだ。マイク・コンリーは言う。「大事なのは集中し続けることだ。大丈夫だよ、ナゲッツが簡単に勝たせてくれるようなチームじゃないことは分かっていたからね」