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再結成の初戦で先発全員がプラスマイナス+20以上

前年王者ウォリアーズは、今シーズンを通して主力の負傷離脱に悩まされた。レギュラーシーズン序盤からステフィン・カリーが足首に不安を抱え、ドレイモンド・グリーンも肩を痛めた。シーズン中盤から後半にかけてカリーの離脱が増え始め、終盤戦ではケビン・デュラントが肋骨骨折、クレイ・トンプソンも利き手である右手の親指を骨折。彼らの離脱とともにウォリアーズは負け始め、順位も西カンファレンス首位をロケッツに明け渡し、不安を残したままプレーオフを迎えた。

西7位スパーズとの1回戦では下剋上もあるのではないかと言われたものの、カリー不在の中で4勝1敗で突破。そしてペリカンズとのセミファイナル第2戦からは、ついにカリーが戦列に復帰し、連覇に必要なピースが揃った。

第3戦ではペリカンズのラジョン・ロンドの『アシスト・ショー』に翻弄されて敗れたが、第4戦は試合序盤から盤石の試合運びで快勝。実はこの試合で、指揮官スティーブ・カーは、ウォリアーズが誇る最強の武器を今シーズン初めて使った。昨年のポストシーズンを席巻した『死のラインナップ』を再結成させたのだ。

カリーとトンプソンの『スプラッシュ・ブラザーズ』がバックコートを固め、フォワードにはベテランのアンドレ・イグダーラとデュラント、センターにグリーンという組み合わせは、全員がプレーメークができる上に、攻守両面で対戦相手を圧倒できる。1年ぶりの再結成でも問題はなく、彼らは完璧に機能した。

デュラントは、ゲームハイの38得点でオフェンスを牽引。復帰3試合目のカリーはイグダーラ、グリーン、トンプソンによりオープンな状態でボールを受けて23得点をマーク。トンプソンは13得点に終わったものの『死のラインナップ』ではアグレッシブにプレーできる機会が増えるため、今後の試合で爆発する可能性は高い。グリーンは持ち味の万能性を発揮し、トリプル・ダブル級のプレー(8得点リバウンド9アシスト)で繋ぎ役に徹した。イグダーラは持ち味の堅守で相手の長所を消し去る上に、3ポイントシュートも決められる。これを相手が警戒すればカリーが自由の身になり、パスを選択することもできる、というわけだ。

再結成初戦で彼らが記録したプラスマイナスも驚異的で、デュラント(+23)、グリーン(+28)、イグダーラ(+21)、トンプソン(+23)、カリー(+21)という結果に。逆にペリカンズは先発全員がマイナス2桁の数字を残してしまった。

まだ気は早いかもしれないが、ウォリアーズと同じく3勝1敗でカンファレンス決勝進出に王手をかけているロケッツが王者の連覇を阻むには、『死のラインナップ』を攻略できるかどうかが大きな要素になる。そして、もしキャバリアーズが4年連続でウォリアーズとNBAファイナルで激突しても、1年前に滅多打ちにされた最恐ラインナップへの苦手意識を克服できなければ、王者には対抗できない。

デュラントは第4戦後「お互いに良いプレーができている。第5戦では、もっと円滑なプレーが求められるね」とコメント。そして「プレーオフでは、対戦相手によってラインナップを変えて対応する必要が出てくる。ペリカンズはスモールで、速い。それに対応できた。ただ、次の試合にも勝つには、もっと良いプレーをしないといけない」とも語った。

カンファレンス・セミファイナル第5戦というタイミングといい、再結成初戦でのパフォーマンスといい、ウォリアーズは『死のラインナップ』の恐ろしさを最高の形で示した。スティーブ・カーは、第5戦でも同じラインナップで臨む可能性を示唆。ロケッツとの一騎打ちに向け、精度を高めていく時期と判断したのだろう。こうなってしまっては、ウォリアーズは手が付けられないほどの強さを発揮する。第3戦後に付け入る隙があると思ったのは、束の間の夢だった。もう王者に死角は見当たらない。