文=鈴木栄一 写真=鈴木栄一、B.LEAGUE

日本代表など錚々たる指揮官をアシスタントコーチとして支えてきた経験を持つ佐々宜央が、初めてヘッドコーチを務めるシーズンもいよいよ大詰めを迎えた。琉球ゴールデンキングスは西地区優勝チームとして今週末からのチャンピオンシップに臨む。1年かけて鍛え上げたチームでチャンピオンシップに挑む意気込みを聞いた。

『勝負の時』を迎え「見えてきたなという感じ」

──60試合のレギュラーシーズンを終えて、いよいよチャンピオンシップです。まずはキングスについて、ここまで順調にステップアップできているという手応えはありますか。

前回の記事を読ませてもらいました。読むことで取材していた当時のイメージに戻ることができます。前に話しているところからは、もう1つステップが上がっている、違う部分で悩めるようになった感覚はあります。

今は2試合続けてコンスタントにパフォーマンスを出していくための状況をどう作るかを考えています。シュートの成功率が低くてもリードできるようになれば、相手は『うわっ』って思うじゃないですか。そうやって「このパターンは嫌だよね」と思わせる状況を作っていきたいです。

──チャンピオンシップの第3戦はわずか10分での決着で、不確定要素が強いシステムであり、だからこそ2連勝で決めたいという考えがあると思います。その中でどのような選手起用をして、どのように戦おうと考えていますか。

1試合目、2試合目と分けるより、セットで80分という捉え方をしています。日本人選手のところで古川孝敏、田代直希、岸本隆一といった先発メンバーが主力となるメインのオフェンスは定着してきていますが、もう1つ2つと「これもあるんだ」というパターンを導き出したいです。

──チャンピオンシップは短期決戦だからこそ、自分たちのチャンスが来た時、一気に突き放せるような爆発力が大切になると思います。キングスにそういった力があると感じますか?

見えてきたな、という感じですね。岸本、古川といった主力を相手が徹底して抑えに来た時、そこから展開して他の選手がシュートを打てる状況が増えてきている。攻撃が単発で終わることが少なくなってきているとは思います。

「2試合だったら80分、第3戦を含めたら90分間やりきる」

──指揮官として第3戦についてどのように捉えていますか? わずか10分の戦いで、運命が決まってしまうことへの怖さがあるのではないかと思いますが。

実際に第3戦となったら「1年間やってきたことを出すしかない」という気持ちになるでしょうね。最終的にチームの命運を委ねたい選手に、プレーをしっかり託せることができるか。選手が不安にならないように、最後にチームが「よし、これで開き直って行くぞ」となる言葉を言えるようにしたいです。迷ったらそこで終わりです。僕は選手を「楽しむぞ」という気持ちにさせないといけない。あとは選手が自分たちで考えられるようなチームにしていきたいです。

──クオーターファイナルに向けて、どんな部分を最優先で仕上げないといけないですか?

ディフェンスはやらないといけませんが、それ以上に仕上げないといけないのは、12人のバスケットです。いろいろとメンバー交代して組み合わせが変わってきた時に、先発の時とは違った状況を作っていく。2試合だったら80分、第3戦を含めたら90分間やりきるためのチームのバスケットを仕上げていきたいです。

──今シーズンがヘッドコーチ1年目の佐々さんにとって、チャンピオンシップは当然、未経験の舞台となります。プレッシャーはどれぐらい感じていますか?

そもそも琉球ゴールデンキングスというチームは、本当に大きなものを背負っています。常に満員の会場で、いろんな人が応援してくれていて、その人たちの期待に応えないといけない。そういった意味でのプレッシャーは絶対にあります。ただ、やれるだけやって結果が出なかったら力がないと批判されるでしょうが、批判はすべて受け入れるつもりだし、その心構えはあります。だからこその覚悟、責任感を持ってやっています。

「仲間と過ごす時間を大事にして、良い形で終わりたい」

──チャンピオンシップにはどんな心境で臨みたいと思いますか。

そんなに大きいものではありませんが、1シーズンに渡って積み重ねてきた自信はあります。それを出しきっていくことが大事だと思っています、だからこそプレッシャーを感じながらも、それを乗り越えていきたいという気持ちが強いですね。そういう自分でもありたいし、チームとして乗り越えていきたいです。

あとは僕だけでなくスタッフや選手も含めて、その責任はそれぞれがむしろ負うべきです。その中で個々がやるべきことをやっていけば、自然と良い結果が出るものだと思っています。ただ、「チャンピオンシップは楽しみです」と一言でまとめることはできないです(笑)。今は苦しみを乗り越えた時の楽しみを求めながら、愚直にやっていくだけです。

──最後にチャンピオンシップに向けての意気込みをあらためてお願いします。

全く同じメンバーで、そのまま来シーズンもいくことはプロチームでは普通に考えられません。「沖縄のために」という思いで今の仲間と1シーズンやれて来られたのは、本当ありがたいことです。ただ、最長でもあともう1カ月でこのチームはなくなってしまう。そう考えたら、絶対に後悔だけは残さないようにしようと。この仲間と過ごす時間を大事にして、良い形で終わりたいと思います。