文=立野快 写真=B.LEAGUE

強豪相手に連勝、勢い付く富山が主導権を握る

5月5日、滋賀レイクスターズが富山グラウジーズと対戦。富山はこの連戦で1勝を挙げれば、そして滋賀は連勝すれば残留プレーオフを回避できる『自力』での残留が懸かっており、ともに負けられない一戦となった。

試合序盤に主導権を握ったのは、この1週間でシーホース三河と新潟アルビレックスBBに連勝している富山だった。サイズに勝る優位を生かし、ポストアップとパスを組み合わせて滋賀のディフェンスをこじ開けていく。デクスター・ピットマンのポストプレー、橋本尚明の3ポイントシュートで差を広げ始めると、守備ではゴール下を堅く守りトランジションオフェンスにつなげていく。第1クォーターエースの宇都直輝がポンプフェイクで並里成をかわしブザービーター。完全に流れに乗った富山が22-12と2桁のリードを奪った。

第2クォーターには狩野祐介の連続得点、並里のアシストからベンキー・ジョイスのダンクシュートを浴びて27-24と1ポゼッション差に縮められるが、ここから宇都のアシストから大塚裕土、クリント・チャップマンの得点で突き放し、40-30とリードして前半を終えた。

ターンオーバーを誘い速攻へ、滋賀の逆転劇

それでも後半になると試合の様相は一変。ホームの声援に後押しされた滋賀は運動量で富山を圧倒し始める。前半パスが良く回っていた富山のパスコースを厳しく潰して攻撃を分断すると、プレーを読み切った守備でターンオーバーを立て続けに誘い、速い展開から並里がアシストと得点を量産。残り2分20秒で並里のジャンプシュートで51-51と追い付き、帰化選手のファイ・サンバの強みを生かしたリバウンドから並里がドリブルで持ち込みレイアップで勝ち越す。このクォーター、富山のターンオーバーは7。オフェンスのすべてを仕切る宇都がそのうち6を喫しており、宇都の勢いを止めたことで滋賀が逆転に成功した10分間となった。

57-53で迎えた最終クォーター、滋賀はディフェンスの強度を落とさず、前半に活躍したピットマンのポストプレーもディオール・フィッシャーを中心に抑える。速攻に転じれば高橋耕陽が走りで合わせ、このクォーター5本のシュートをすべて成功させる大爆発で11-0のランを作りだした。残り3分22秒、並里からフィッシャーへのアリウープが決まって74-59と15点差。続いて長谷川智伸の得点で差が広がると富山は宇都をベンチに戻し、これで試合は決した。最終スコア82-67、滋賀が快勝している。

残留プレーオフ回避のため連勝が必須だった滋賀は重要な一戦に勝利。後半から長谷川智伸を中心に宇都を守り切り、激しいディフェンスから走るバスケットで富山を圧倒した。逆境を跳ね返したディフェンスは明日の試合に向けて大きな収穫となった。

明日の第2戦、トランジションオフェンスをどう止めるか

殊勲の長谷川は会心の逆転勝利をこう振り返る。「前半はなかなかチームのルールだったり、作戦通りに行かずに10点リードされてしまいましたが、我慢強くプレーしてディフェンスからオフェンスにつなげたからこそ勝利という結果につながったと思います」

富山のヘッドコーチ、ミオドラグ・ライコビッチは「前半は多く取れていたリバウンドも後半は上手くいかず、ターンオーバーも前半5本だったものが後半11本と増えてしまった」と後半の失速を悔やむ。「ディフェンスでは特に、並里選手とフィッシャー選手のピック&ロールに注意し、前半は抑えることができていて、それが結果に出ていました。後半やられてしまったトランジションオフェンスを止めることができないと勝負は厳しいものになってしまいます」と、明日の第2戦へ守備面でのアジャストが必要と語る。

富山から滋賀まで多くの富山ブースターが駆け付け、スタンドの一角を赤く染めたが、富山は勝ちきることができず。この日、三遠ネオフェニックスが勝利して残留を確定させた。明日行われる滋賀vs富山の勝者がB1残留となり、敗者は残留決定プレーオフに回ることになる。

崖っぷちで一歩踏み留まった滋賀。長谷川は明日の『決戦』に向け「今シーズンのベストゲームにしたい」と意気込む。「試合後は、うまくいかなかった時間帯について仲間同士で指を差し合うこともなく、喜びもほどほどにみんなで気を引き締め合う言葉掛けが多かったです。本当に明日は崖っぷちの戦い。いい意味で明日は最後にしなくてはいけない」