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自分でコントロールできない困難を乗り越えて

2013-14シーズンからペリカンズでプレーしているドリュー・ホリデーにとって、今から約1年半前に人生を揺るがす大きな出来事があった。

元アメリカ女子代表のサッカー選手だった妻のローレン・ホリデーは、当時ドリューとの間に第一子を妊娠中だった。そんな幸せの最中、ローレンが脳腫瘍と診断されたのだ。幸い、脳腫瘍の影響は生まれてくる子供にはないことが判明。妻が無事に出産した後、腫瘍摘出手術を受けることに決まった。ホリデーは妻を看病するため、2016-17シーズン開幕から12試合を欠場。彼にとっては家族を優先するのが当然の決断ではあっても、本人には『契約最終年』という不安がつきまとっていたことは、容易に想像がつく。

ローレンは無事に第一子の女の子を出産した後、手術も無事に成功。母子ともに順調だった。そしてホリデーは昨シーズンの活躍を認められ、昨夏に5年1億2600万ドル(約135億円)というマックス契約でペリカンズと再契約を結んだ。

結果としてすべてが希望通りに進んだが、ホリデーは当時の心境をこう語っている。「相当なストレス、それから重圧を感じていた。自分の家族の生い立ち、自分の信念を育んできた過程を思えば、耐えないといけなかった。いつも祈っていた。家族、特に妻のために」

ホリデーは、一握りのアスリートのみがたどり着けるNBA選手になれたことで、なにもかも自分だけで対応できると思い込んでいたという。

「周りに感謝もするし、尽くすつもりだけど、今の立場は自分が努力して手にしたものだ。自分でコントロールできることばかりだった。でも、妻のことは、自分にはどうにもできなかった。そういう状況を乗り越えられたのは僕にとって特別な経験だよ」

キャリアハイの平均19.0得点を記録した今シーズン、ホリデーはデマーカス・カズンズが離脱した後、アンソニー・デイビスとともにチームのオフェンスを担っている。トレイルブレイザーズとの西カンファレンス1回戦ではここまで平均23.3得点と活躍し、3連勝に貢献している。

たとえ家族優先と分かっていても、プロアスリートが立ち止まるには相当な勇気がいる。ホリデーは周りの助けにも恵まれ、困難を乗り越えられた。そして今、コート内外で幸せを噛みしめている。