岡田優、B1残留へ向けた決意「ここに来るまでの自分は、死んでいたようなもの」

2018/04/20
Bリーグ&国内
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文=カワサキマサシ 写真=B.LEAGUE

「期待されていることが一番のモチベーションに」

岡田優は2006年にbjリーグの高松ファイブアローズでプロ選手としてのキャリアをスタートさせ、これまでに数々のチームを渡り歩いてきた。Bリーグ元年だった昨季は、自身にとってのべ5球団目となる富山グラウジーズに移籍。レギュラーシーズン60試合中51試合に出場と主力として起用され、残留プレーオフでも2回戦でチーム最多の25得点を挙げて富山のB1残留に大きく貢献した。

しかし今季はシーズン序盤こそ20分近くのプレータイムを得ていたが、徐々にその時間を減らし、12月の半ばからはコートに立つことすらなくなっていた。忸怩たる思いを胸に秘めながら富山のユニフォームを着ていた岡田のもとに、西宮から獲得のオファーが届いた。

「富山にいたあの時期の自分を知っているはずなのに、『今すぐ力を貸して欲しい』と、そう言ってくれた。自分はこのチームから期待されているんだと感じましたし、西宮からのオファーで生き返った。あの話をもらった時のことは、ずっと忘れられません。チームも、難しい決断だったと思います。シーズンの途中に呼ぶこともそうですし、僕が来たことによって誰かが出られなくなるわけですから。それでも、そういう決断をしてくれた。チームから期待されていることが、プレーする一番のモチベーションになっています」

そうして1月26日に、西宮ストークスへの期限付き移籍が電撃的に発表された。彼にとってシーズン途中での移籍は、初めてのことだった。「経験したことがなかったのですが、シーズン途中での移籍は難しかったですね。富山での状況も良くなかったし、すぐに行って自分が何かできるかといえば、できないのは分かっていた。その戸惑いはありましたが、今すぐ力を貸してほしいと言ってもらった言葉を意気に感じて、全く迷わずに返事をしました」

連敗のトンネルから抜け出せずにいた西宮で、スコアラーの岡田が求められるものは勝利に直結するプレー。そのことはもちろん、決して軽くはない重圧が背中にのしかかることも重々承知していた。「プレッシャーは加入した時からありましたし、今もあります。だけどこれは、シーズンが終わるまで抱えていかないといけない。でもやっぱり、プレッシャーがない状況でやっているより、全然いい」

「自分のここまでの数字には全く満足できない」

西宮に加入してからの岡田は、3月9日の川崎ブレイブサンダース戦でシーズンハイの25得点を記録。かと思えば得点が2桁に届かず、らしくない結果でゲームを終えてしまうことも少なくない。「こっちに来てから、コンスタントにスコアできていません。特に当初はやりすぎるのもどうかなと、どこかで遠慮している自分がいました。シーズンの初めからいるならできるんですけど、途中で入ったので難しいところです」

「もちろん、周りのほうがすごく気を使ってくれていると思います。若い選手が多いチームに突然、年齢が一番上になる選手が入ってきたわけですから。入った当初は周りとプレーが噛み合わないところもあったし、フォーメーションを覚えていない状況でもありました。そのことを含めても、自分のここまでの数字には全く満足できない」

プロ12シーズン目。若手の頃は得点することだけを目指していた。だけどそんな時期は、とうの昔に過ぎ去った。今や彼の視界は大きく広がり、コート全体を見渡している。「試合の中でどんどん攻めることはできるんですけど、ダメな時にいかに自分にストップをかけて、切り替えて違うプレーをするか。そのことは常に頭に置いています。自分がダメになったら、チームに与える影響が大きい。試合を壊すような際どいところにいるので、気を付けています。それを意識してスコア以外の部分、ディフェンスやリバウンドでもチームに貢献することが大事だと思っています。それとやっぱり……プレーオフは意識していますね」

突然に、彼の口から「プレーオフ」という言葉がこぼれた。残留プレーオフへの出場が決定した今、それを意識するのは当然だが、実はもっと早い時点でチームはフォーカスポイントを絞っていたのだという。

「僕が入って1カ月ほど経った、2月の後半の段階でした。天日(謙作コーチ)さんが自分の口で『残留プレーオフを戦って、そこで勝てばいい』とおっしゃったんです。コーチが自らそう言うのは、すごく大変なことだったと思います。だけどそう言ってくれた言葉の意味は理解できました。残留プレーオフに向けて選手が自信をつけ、チームとして勝ちパターンを作り、最後に勝ち切る。それが、これからの僕らが目指すものだと」

「もう二度とは出たくない」残留プレーオフに挑む

残留プレーオフの結果によって得られるものは、天と地ほど違う。昨季も富山で経験したあの短期決戦を振り返ると、彼の表情は鈍く曇る。「天日さんが残留プレーオフを戦うと言ったときに、負けたことを想像してドキっとしました。そこで負けたら自分はもちろん、家族やブースターさんら、ストークスに関わるいろんな人がB2に落ちる。しかも今季、上がってきたばかりなのに……」

昨シーズンの富山では最終的に勝って残留を果たしたが、長いバスケットボール人生のなかで、あれほど喜びが伴わない勝利はなかったと言う。「昨季のプレーオフは何も楽しくはなかった。こんなプレーオフには、もう二度とは出たくないと思いました。もしあそこで負けていたらさらに1週間後に、次は入れ替え戦をやる日程でした。疲れ切っていたし、そうなると勝つなんて絶対に無理だった。これで決めないといけないと切羽詰まった気持ちで戦って、B1に残った喜びより、『やっと終わった。こんな思いはもうしたくない』という気持ちしか残りませんでした。そういうふうにバスケはしないほうがいい」

その残留プレーオフに、図らずも今シーズンも臨まなくてはならなくなった。「このチームは若くて大人しい選手が多いので、みんなが意見を出し合って分かり合うことが大事。普段からみんなの仲は本当にいいんですが、最後に勝ち切るためにはプレーで主張し合うことでもっとつながらないといけない。負けたことをあまり振り返らず次に向かうのは若さのいいところでもありますが、なにが足りなかったのかを振り返ってから次に進んだほうがいいと思う。僕は意識して、みんなにそういう話をするようにしています」

「残留プレーオフまでに昨季の経験をみんなに伝えることも、僕ができることの一つだと思っています。現実的にプレーオフに行くことは決まっているので、そこで勝ってB1に残ることがすべて。自分がヒーローになろうという意識はありませんが、それくらいの覚悟を持ってやっていきます」

自分を蘇らせてくれたクラブのため、岡田優は粉骨砕身の覚悟で再び厳しい戦いに挑む。