文・写真=鈴木栄一

重圧の中ですべて決めた『外せない』フリースロー

4月8日、琉球ゴールデンキングスは川崎ブレイブサンダース相手にオーバータイムまでもつれる激闘を79-77で制した。前日に69-83で敗れた借りを返すとともに、チャンピオンシップで戦う可能性がある相手に価値ある勝利を挙げた。

勝利の立役者となったのは、3ポイントシュート7本成功を含む32得点をマークした岸本隆一だ。得点の多さに加え、3点を追う第4クォーター残り5秒から3ポイントラインの外でシューティングファウルを獲得。1つも外せない重圧の中で3本とも成功させている。

「最後のフリースローはめっちゃ緊張しました。一番、価値のあるフリースロー3本でした。ただ、以前にも似たような状況があって、ああいう時だからこそ気楽に。内心、外しても誰か拾ってくれたと思うくらいの気持ちで打っていました」と、良い意味での開き直りができていた。さらにオーバータイムでは全12得点のうち、1点を追う残り20秒にゲームウィナーとなる3ポイントシュートを沈めるなど7得点と、文句ナシの内容だった。

「ホームで連敗は本当に避けたかった。東地区の強豪相手にこれからどうやって戦っていくんだというところもあり、何が何でも勝ちたかった試合でした。ゲームとしてはしんどい時間帯が長かったです。ただ、そこで昨日は途中で集中力が切れてしまったものを、今日は1試合を通してみんな我慢強くやれたのは良い経験でした」

3ポイントシュート好調、一方で『依存』への危機感も

勝利という結果に加え、内容についても実りある試合だったが、岸本は安堵感とともに危機感も感じている。

「誰かが絶好調の試合でクロスゲームとなって負けるのは、一番僕としては悔しい。勝てて本当に良かったです。ただ、次に川崎など東地区の強豪相手に戦う時、誰かが30点を取ることを期待してゲームコントロールはできないです。オフェンスの精度をもっと高めていかなければいけない。もっと突き詰めていかなければいけない危機感をより感じました」

前半は5得点だったが後半から大爆発して32得点のパフォーマンスについて、シューターとして打ち続けることの大切さをあらためて感じたと言う。「4本、5本連続でシュートを外すと、いつもは別の選択肢を考えるのが、今日はそういう状況でも積極的にいられたのは自分にとっても良かったです」

ただ、一方で3ポイントシュートに依存しすぎることへの危険性を感じてもいる。「昨日の試合では3ポイントが2ポイントの本数よりも多かった。それは普通ないことです。いかにペイントでプレーすることが大事かということをすごく感じた。3ポイントは波があるので、もう少しペイントをいかに攻略していくのか、残りの試合で高めていかないといけない。そこは練習からしっかり準備してやっていきます」と3ポイントシュートの威力をより生かすためにも、インサイドをしっかり攻めることへの重要性を改めて意識する試合となった。

特定の選手に得点が偏らない琉球で、岸本の得点に期待

現在、琉球でチームトップの得点を挙げているのは1試合平均15.2点のハッサン・マーティン。戦術から言っても特定の選手が1試合30得点近くをコンスタントに挙げるチームではなく、また得点で外国籍選手に多くを依存するわけでもない。だからこそ、これからは岸本や古川孝敏といった日本人選手たちがどれだけ得点を増やしていけるかが大切となってくる。

その必要性については岸本も十分に認識している。「自分が点数を取らないと。1試合平均で自分が15点くらいコンスタントに取らないとチームとして点数が伸びないかなという思いはあります。オフェンスで、しっかり責任をもってやらなければいけないと感じています」

Bリーグ初年度の昨シーズン、岸本は司令塔としてゲームコントロールであり、味方のシュートチャンスを作り出すクリエイターの部分を強調するかのようなプレーを増やしていった印象がある。しかし、振り返ればbjリーグ時代の2013-14シーズンのファイナルで、当時は秋田ノーザンハピネッツに所属していた富樫勇樹との壮絶な点の取り合いの末、34得点をマークしてチームを優勝に導いてMVPになり、bjリーグのラストシーズンでは日本人最多タイの41得点を挙げるなど、元来は点を取れる司令塔タイプだ。

琉球がチャンピオンシップに出るだけでなく、勝ち上がっていくためには、スコアラーとしてより脅威を与えるパフォーマンスが求められる。