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環境の変化に打ち勝ち、ロケッツ躍進に貢献

昨年の6月下旬、クリス・ポールは大きな決断を下した。5年間在籍したクリッパーズを離れ、新天地ロケッツへの移籍を決めたのだ。当初はフリーエージェントになっての移籍になると言われたが、ポールは古巣クリッパーズにとってもプラスになるようにトレードという形を選択。これにより、7選手と交換という大型トレードが実現した。

環境が変われば誰しも緊張し、重圧を感じるもの。それはNBA最高のポイントガードと呼ばれるポールも同じだった。『CNBC』とのインタビューでポールは、ロケッツ移籍後に感じた重圧について、こう語った。

「僕たちアスリートは何でもうまくこなしていると思われているけれど、それは違う。僕は、写真撮影の日に吐いたんだ。あれはチームの写真撮影の時だった。突然気分が悪くなって、『ちょっと失礼』と言って、裏に走っていって吐いた。でも、電話を1本かけただけのようなフリをして現場に戻ったよ。大きな変化が自分に起こることで不安になったんだ」

32歳で大きな決断を下したポールが抱えていた不安は、自分自身のキャリアに関してだけのものではなかった。ポールは言う。「LAに6年住んで、それで自分だけではなく、家族、子供、周りの全員に影響を与える決断を下したんだ。大きな決断だった」

ポールのロケッツ移籍が決まった直後から、ジェームズ・ハーデンとの共存は難しいという意見が出始めた。ボールを保持する時間が長い2人が果たして円滑にプレーできるのか、という疑念が起こったものの、それはシーズン開幕後すぐに杞憂に終わった。ロケッツは快進撃を続け、西カンファレンス首位を確定。ポールとハーデンを軸にしたケミストリーは機能し、23年ぶりの優勝が実現するのではないかという気運が高まっている。

ポールは今シーズン終了後フリーエージェントの権利を手にする。この分なら間違いなくロケッツと2億ドル(約214億円)を超える条件で再契約するだろう。

家族のことだけを優先するなら、あのままクリッパーズと再契約した方が良かったかもしれない。ただ、バスケットボール選手としてのキャリア、幸福感を追求するため、大きな一歩を踏み出した。

ポールは「この決断が、自分の人生において最高の出来事の一つになるなんて、誰にも分からなかった」と、現状について話している。全てが順調に進んでいるからこそ言える台詞だが、本人の努力があってこそ。あとは、悲願のキャリア初優勝を現実のものにするだけだ。