アミヌとアイザック、主力2人を欠いてプランが崩れる

30勝35敗で東カンファレンス8位。プレーオフ圏内に食い込んでいるオーランド・マジックは、得点は少ないが失点も少ないという分かりやすい構図で戦ってきました。勝利と再建の両方を追い求めたシーズンでプレーオフに進めば成功と言えますが、勝率は5割を下回っており、来シーズンに繋げる意味でもチーム力を上積みしたいところです。

フリーエージェントで獲得したアル・ファヌーク・アミヌが11月に、さらに期待のジョナサン・アイザックが1月にシーズン絶望となるケガを負ったことでマジックのプランは崩れました。マンマークでもヘルプでも活躍する2人の優秀なディフェンダーは、アーロン・ゴードンとのトリオでリーグ最強のウイングディフェンスを実現するだけのポテンシャルを持ち合わせていただけに残念です。

長いシーズンにケガは付きものだけに、ある程度は致し方ないものの、万能型の主力2人が離脱したことで、プレッシャーディフェンスが効かなくなり、3ポイントシュートで大量失点を喫しての敗戦が増えてしまいました。それでも失点数はリーグ4位と残されたメンバーが踏ん張ったことは高く評価できます。

もともとインサイドを手厚く守ることを得意とするスタイルで、3ポイントシュートは決められてもディフェンスリバウンドを確保し、セカンドチャンスを許さないことを徹底するリスクマネジメントで粘り強く戦っています。

逆境の中でブレイクスルーが期待される選手たち

エースのニコラ・ブーチェビッチでも19.5得点で、1試合平均20得点以上を挙げる選手のいないマジックですが、2桁得点を記録するのが7選手いるバランスアタックがオフェンスの特長です。

2017年ドラフト1位のマーケル・フルツは高い能力をひけらかしてミスをするようなことはなく、47%と高いフィールドゴール成功率で貢献しています。深刻なスランプに陥り、すでにオールスターにも選ばれている同期のドラフト組から大きく出遅れたフルツですが、マジックへの移籍を機に自信を取り戻しました。エースの仕事ではなく堅実な成長を求められたことで、その期待に応えています。それでもフィットすれば一気にステップアップできる可能性を秘めており、フルツがプレーオフに向けた大切な試合の中でも安定したパフォーマンスを発揮することが、チーム力の上積みになります。

一方で大きなステップアップを求められるのが、ワールドカップでアメリカを倒したエバン・フォーニエとタフショットでも関係なく決めてくるテレンス・ロスの2人です。マジックの勝利の方程式はロースコアの我慢勝負に持ち込んだ末に、この2人のシュート力で勝負を決める形。ともにスーパースターとは言い難いものの、ノッている時には手が付けられず、どんなにプレッシャーをかけても決めている爆発力は対戦相手からすると厄介極まりない存在です。

無観客とはいえ残りの試合がオーランドで行われることは、少なからずマジックに優位に働くことが期待されますが、今シーズンはホームの方が得点が少なくなっています。しかし追い上げる展開では躊躇なく3ポイントシュートを放つことに加え、ディフェンスの激しさも増し、アドバンテージがない方が真価を発揮してくる少々奇妙な特徴を持ったチームなので、ホーム開催であることはあまり関係なさそうです。

このまま行くとプレーオフはバックスとの対戦になりますが、ここで真価を見せてもらいたいのがゴードンです。ヤニス・アデトクンボを個人で守れる数少ない選手の一人で、今シーズンは3回の対戦でフィールドゴール成功率38%に抑え込んでいます。しかし、逆にオフェンスでは3試合でフリースローの3点のみと完璧に抑え込まれてもいます。スーパースターがいないマジックですが、それはゴードンがスーパースターになることを信じて育ててきたチーム方針も関係しています。チーム力の上積みという意味でも、プレーオフを想定する意味でもゴードンがオフェンスでもスーパースターとなり、この状況を打破することが期待されます。