終盤に猛追するも勝ち切れない現状
サンロッカーズ渋谷のチャンピオンシップ進出に黄色信号が灯っている。先週末のシーホース三河戦を2つとも落とし、これで8連敗。勝ち星から1カ月遠ざかっている。三河との第2戦では、最終クォーターに猛反撃を見せたが、あと一歩届かなかった。
12得点7リバウンド4スティールとオールラウンドに活躍した広瀬健太は「チームを良い流れに持っていくことがなかなかできなくて、それが残念です」と下を向いた。
SR渋谷は橋本竜馬を広瀬がマークし、比江島慎を伊藤駿がマークする戦術を用いた。身長を見れば逆のマッチアップが妥当だが、広瀬のカバーディフェンスやポジショニングの巧さを強調した戦術だった。だが桜木ジェイアールの老獪なテクニックや比江島の個人技がその上を行った。広瀬も「桜木選手の視野が広く賢いので、なかなかダブルチームにいくタイミングがなくて、ウチのゲームプランとちょっと違ってしまった」と機能しなかったことを認めた。
SR渋谷は最終クォーター残り7分を切って18点のビハインドを背負った。だがそこから強度の高いトラップディフェンスによって6つのターンオーバーを誘発。「ウチのビッグマンはサイズも幅もあるのでダブルチームにひっかかりやすい。毎回やると対策されるので、基本的にはやりませんが、追いかける展開でうまくハマった感じです」とSR渋谷が大事にしているディフェンスの片鱗は見せた。
求められる「個」と「チーム」のケミストリー
ディフェンスを信条とするSR渋谷だが、この8連敗中の平均失点は81と、チームの強みが出し切れていない。だがそれはディフェンスが崩壊したというより、得点力不足が影響しているようにも映る。攻守は表裏一体で、いくら良いディフェンスをしてもオフェンスで得点できなければ、ディフェンスに悪影響を及ぼす。
SR渋谷の悪い時間帯はボールムーブが停滞し、ボールを預けて他の選手の足が止まることがある。広瀬の存在はそうしたチームオフェンスが停滞した時の潤滑油となる役割を果たしている。「どうしても選手と選手の距離が長くなってしまう時が多かったです。ガードが攻める時にスペースは取るんですけど、そうじゃない時はボールを受けに行ったり、うまくボールが回るように中継したりということはオフェンスで意識してます」
神出鬼没のスティールやオフェンスリバウンド、速攻の出足を止めるディフェンスなどは言わずもがな広瀬の持ち味。チームルールの順守は大事だが、そうした個々の『感性』を生かすこともまた重要である。広瀬も突破力のあるベンドラメ礼生を例に挙げて同調する。
「ベンドラメにしてもそうですが、感覚や感性でやってるところがあります。個人の持っているものと組織でやらないといけないことをうまくミックスしていかないといけない。個人に頼りすぎてもダメですし、選手の個性を消すのも良くないです。ベースがありつつ、そこで個性が生きてくるようにしていきたい」
「チャレンジャーだということをもう一回思い出して」
琉球ゴールデンキングス、千葉ジェッツ、アルバルク東京、そして三河と各地区首位チームを相手の8連敗。『一体感』を大事にするチームだが、「負けが込んでいるので決してチームの雰囲気は良くない」と、広瀬は正直に明かす。
それでも「一つ勝って、流れを持ってくるってことで潮目も変わってくると思う。自分たちがチャレンジャーだということをもう一回思い出してやらないきゃいけない」と語る。
ケガ人を多数抱えながら10連勝を記録するなど、前半戦のSR渋谷の躍進は際立っていた。だからこそ現状を正面から受け止め、慢心せずチャレンジャー精神を持つことがチャンピオンシップ進出のために必要となる。
「先のことはもちろん考えないといけないですが、目の前の試合に勝たないと次のステップには行けない状況」と広瀬が言うように、連敗ストップをきっかけに、再びチャンピオンシップ争いを面白くしてもらいたい。
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