文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

出だしの悪さを修正した千葉が優位に立つ

千葉ジェッツが船橋アリーナに栃木ブレックスを迎えた第1戦。Bリーグ初年度から繰り返し好勝負を演じてきた両者が、今回も素晴らしい試合を見せた。

先手を取ったのはアウェーの栃木。高い位置からプレッシャーを掛けてイージーシュートを許さず、田臥勇太の速攻、遠藤祐亮の3ポイントシュートで開始2分半で10-0と走った。しかし残り3分にジェフ・ギブスが個人ファウル2つでベンチに下がり、オン「2」の優位を失うと形勢逆転。千葉は富樫勇樹のドライビングレイアップで流れを呼び込み、小野龍猛の3ポイントシュートで締めて、15-18までビハインドを縮めた。

第2クォーターは一進一退の攻防が続く。残り5分50秒、トランジションからマイケル・パーカーのゴール下が決まり、24-23と千葉がついに逆転した。それでも、喜多川修平のミドルシュートで栃木が再逆転。両チームともに堅守をベースとするチームで戻りが早く、得意のトランジションを封じ合うことでロースコアの展開が続く。

それでも残り3秒の場面で富樫のパスカットからギャビン・エドワーズへと展開。この試合で初めての速攻を決めた千葉が31-30とリードして前半を終えた。

第3クォーターは序盤こそ膠着したが、遠藤祐亮がファウルトラブルでベンチに下がると千葉がタフショットを強いては速攻につなぐ展開に。このクォーターの終了間際にはルーズボール争いで富樫と渡邉裕規が交錯。こぼれ球を保持した千葉がパーカーの速攻へとつなげた上に、渡邊は頭部から出血しプレーを続けられず。小野の3ポイントシュートで55-45、千葉が2桁のリードを奪って第3クォーターを締めた。

ラスト4分間で12点ビハインドからの大逆転劇

最終クォーターは千葉がリードを保って時計が進む。残り4分、エドワーズが生原秀将のダブルクラッチを読んでブロックショットで叩き落とす。ここから繰り出した速攻での石井講祐のレイアップはロシターに阻まれるも、ブロックからそのまま走り込んだエドワーズが押し込んで68-56。粘る栃木を突き放すビッグプレーで千葉がこの試合最大となる12点とリードを広げた。

それでも栃木はタイムアウトで態勢を立て直し、遠藤が3ポイントシュートを決めて点差を1桁に戻すと、もう一段階上の粘りを発揮し始める。千葉のオフェンスの起点となるピック&ロールに対し、ロシターやギブスがビッグマンらしからぬ素早いフットワークでズレを作らせない。小野のポストアップやエドワーズの1on1もチームディフェンスで封じ、外からの淡泊なシュートを打たせてリズムを崩した。

残り1分を切って、田臥勇太がアキ・チェンバースのハードディフェンスの裏をかいてファウルを誘い、フリースロー2本を決めて1点差に。さらに高い位置からプレッシャーを掛けて千葉のボールをルーズボールにすると、この争いで遠藤が富樫のファウルを誘う。このフリースローを1本決めて71-71の同点に追い付いた。

残り時間は27秒。24秒を使い切っても相手に反撃の機会が残されているきわどい時間、千葉は富樫の1on1にすべてを託す。富樫は時間を使い、ショットクロック3秒の場面で自らの3ポイントシュートを選択した。だがこれが外れ、しかもロングリバウンドが喜多川修平の手に。喜多川は迷わずボールをプッシュ。残り2秒ならレイアップまで持って行かれると判断した富樫がファウルで止めた。

プレッシャーのかかる場面ではあったが、喜多川はこのフリースローを2本とも決めて勝負アリ。タイムアウト明けの4分間で、17-3と圧倒した栃木の見事な逆転勝利となった。

「最後のタフネスさ、本当にそこに尽きる」

劇的な逆転勝利を収めた栃木の安齋竜三ヘッドコーチは「チームで決めたルールを、選手が最後の最後までエナジーを持ってやってくれた結果」と選手たちを称えた。ラスト4分でのタイムアウトでは「ディフェンスのアグレッシブさをもう一回出そう。ディフェンスからオフェンスの流れをもっと早くして、アップテンポなゲームに持っていこう」と指示をしたという。まさにこの言葉通りの展開で、その時点で56-68だったスコアをひっくり返したのだから痛快だろう。

一方、敗れた千葉の大野篤史ヘッドコーチはこの逆転負けを「自滅」と表現した。「チームで戦う姿勢が栃木さんのほうが見られましたし、ボールに対する執着心があからさまに違うところ。ミスするのはいいんですが、チームとして戦う意識がかなり低いなと思いました」と試合を振り返った。またキャプテンの小野も「最後のタフネスさ、本当にそこに尽きると思います。点差が開いて気の緩みだったり、勝ちたい気持ちだったり、最後の4クォーターは間違いなく負けていた気がします」と語った。

終盤のメンタルの差で明暗が別れ、痛い1敗を喫した千葉。東地区優勝を目指す上で連敗は致命的となる。明日の第2戦はどれだけ戦う姿勢を保ち続けられるかがカギになりそうだ。