張本天傑

197cmの張本天傑は、スモールフォワードとパワーフォワードをこなすが、最近は日本代表でも名古屋ダイヤモンドドルフィンズでもスモールフォワードをメインに練習していた。しかし、今シーズンの名古屋Dはケガ人が続出したことにより張本自身の起用法も定まらず苦しいシーズンに。それでも自身の成長のためとポジティブに取り組んだ張本に、今シーズンを振り返ってもらった。

「正直、ポジション争いでは厳しいところがありました」

──今シーズンの振り返りの前に、昨夏のことを聞かせてください。7月のジョーンズカップに出場し、その後もワールドカップの候補に残っていましたが、代表生き残りの難しさをどう感じていますか?

(八村)塁や(渡邊)雄太、(馬場)雄大がいるので、正直、ポジション争いでは厳しいところがありました。これは選手として塁たちとマッチアップしないと分からない部分ですが、彼らは本当にレベルが違うんですよ。そこは自信があるからといって、どうにかなることでもなくて。本当に一つひとつの積み重ねで、自分はもっと練習しなければいけないと感じました。

──ワールドカップの大会直前でメンバーから外れた時は、どんな気持ちでしたか?

なんとなく練習の雰囲気で誰がどうなるかというのは分かるんです。自分でもそれを感じながらも必死に練習していました。希望は少しでも捨てたくなかったし、チャンスをつかみたくて必死にやっていたので、外れた時はすごく悔しかったですね。でも、塁たちと一緒に練習できることもあまりないので、すごく良い経験になりました。ワールドカップ予選の時からずっとやっていたので最後の最後で落ちるのはかなり悔しいですけど、みんなはずっと一緒に戦ってきたメンバーなので、「頑張ってきてほしい」という思いが強かったです。

──代表でも3番と4番の両方で起用されていますが、そこの難しさはありますか?

2月のチャイニーズタイペイ戦の時も練習では最初から最後まで3番だったけど、いざ試合になると4番起用でした。そこに対して難しさもありますが、自分でも起用法はなんとなく分かってきているので、レベルアップに繋がる経験だと思ってポジティブにとらえています。代表メンバーと一緒に練習することはすごく良い刺激になりますし、僕自身がもともと3番に慣れているわけでもないので、一つひとつの練習、1日1日を大切に取り組んでいます。

──層の厚いポジションでの自分のアピールポイントはどこですか?

身体の強さは代表の中でも自信があります。(フリオ)ラマスヘッドコーチはいつもディフェンスを強調しているので、そこは身体の強さを生かした激しいディフェンスをアピールしています。でも、それ以上に塁や雄太、雄大といった日本人のトップ選手をマークしてみてクイックネスの部分が必要だと感じたので、そこを磨きたいです。

張本天傑

「これぐらいやらないと自分の成長には繋がらない」

──では、名古屋Dでのことを聞かせてください。張本選手にとって名古屋Dでの4年目となった今シーズンは、どんなテーマで挑もうと思っていましたか?

ワールドカップのメンバーから落ちてすぐに所属チームにフォーカスして、気持ちは上手く切り変えていました。名古屋Dでは40勝以上を挙げて地区優勝して、チャンピオンシップのベスト4に入るという目標がありました。個人的にも結果を残しつつ、3番ポジションでそれなりのプレータイムをもらえるようになりたいと思って挑みました。ただ、開幕早々ビッグマンの2人がケガをしてしまって大変でしたね。

僕自身、開幕戦は3番で出ていたし、今シーズンは3番で使ってもらえる想定でオフ期間も練習していました。ただ、ケガ人が出てしまったので急遽4番でプレーしないといけない状況になってしまったのは予想外でした。昨シーズンも3番でやっていたし、練習でもずっと3番でやってきて自信もついてきていたのに、また4番かあって……。

──チーム事情を考えれば仕方がないとはいえ難しい部分ですね。

ケガ人がいたこともあってシーズン中盤ではプレータイムが増えて30分ぐらい出ていたんですが、30分となると身体的にも精神的にもちょっとキツイものがありました。ただ、これぐらいやらないと自分の成長には繋がらないとも感じたりして、葛藤した部分が多いシーズンでした。

──一番葛藤した部分はポジションが安定しなかったところですか?

そうですね。JB(ジャスティン・バーレル)が復帰してからは、3番もちょこちょこやるようになりましたが、それでもどっちつかずのところがありました。ただ、臨機応変に3番と4番ができることを自分の強みにしなければいけないと思っています。来シーズンからはルールも改正されるので、日本人ビッグマンは3番でも通用するようにならないと、今後は生き残るチャンスも減ってくると思っています。なので、1シーズンを通して3番でやりたかったというのが正直な気持ちです。

──張本選手が今後目指す選手像を教えてください。

この人が出てきたら嫌だなと思われる選手になりたいですね。僕自身、どこかのチームでエースになるような選手でもないので、とにかく相手に嫌だなって思われる選手になりたいです。

例を挙げると、川崎ブレイブサンダースの藤井祐眞ですかね。彼は同期で仲良しなんですが、良い意味で嫌です(笑)。

祐眞と(田中)大貴は同期なんですが、その2人が今シーズンのベスト5に入っているのはうれしいです。もちろん、僕も選ばれたいですが、チーム状況もあるので何とも言えないですね。

張本天傑

「ドルフィンズらしいバスケットを展開できるように」

──藤井選手と仲良しとのことですが、連絡を頻繁に取ったりしますか?

頻繁に取っていますね(笑)。一緒に『荒野行動』というサバイバル系のゲームをしています。5人1チームで戦うゲームなので、祐眞の他にも、辻(直人)選手と(竹内)公輔選手、ウチの小林(遥太)の5人でやっています。リーダーは辻さんで、祐眞が一番上手いからエースですね。僕と小林は放送司令官の補佐みたいな感じです。公輔さんは自由人でいつも辻さんにイジられています。みんなでしゃべりながら爆笑してやっているんですが、僕らがゲームをしている様子をいつかYouTubeで配信したいねと5人で話しています(笑)。

──チーム戦とのことですが、ゲーム中は年功序列はありますか?

ないですね。むしろ公輔さんが一番下みたいな(笑)。下手だからみんなにイジられるんですけど、言われすぎると急に怒って「もういい」という感じになって止めちゃったりするかわいいところもあるんです。でも、公輔さんが抜けちゃうと4人で戦わないといけないから、もう35歳ですし、すねないでほしいですね、面白いですけど(笑)。僕たちはこのゲームを2年前ぐらいに始めて、それ以来頻繁にやっているのに、全然上手くならないんですよ。勝率5割なんて全然超えられないです。

──それでは最後に名古屋Dのファンの皆さんへのメッセージをお願いします。

今シーズンは残念な終わり方になってしまい、さらに僕たち自身が表現したいバスケットを最後までできなくて、申し訳ない思いがあります。今、一番思うのは真っ赤に染まったドルフィンズアリーナで皆さんの声援を聞きたいですし、皆さんと一緒に戦いたいという気持ちが今のモチベーションにも繋がっています。この夏を使って自分自身のレベルアップを、そしてずっとほぼ同じメンバーでやってきているので、皆さんとまた一緒にチャンピオンシップに行けるように、ドルフィンズらしいバスケットを展開できるように、チームとしても個人としてもしっかりと優勝に標準を合わしてやっていきたいと思っています。応援よろしくお願いします。