文=鈴木健一郎 写真=古後登志夫

待望のシューターが復帰「自分の良さを出していく」

バスケットボール男子日本代表のワールドカップ1次予選、その最初の2試合が行われた昨年11月のWindow1に辻直人の姿はなかった。ケガで代表を外れたからだ。このところの辻はケガという不運に相次いで見舞われている。昨夏は夏の東アジア選手権とアジアカップも欠場した。重要な大会という意味では2016年のリオ五輪最終予選から、久々の参加となる。

そんな今回も『ギリギリセーフ』だった。1月末のBリーグの試合でケガをして、全治3~4週間と発表された。それでも辻は2週間で戦線復帰。「なんとか選んでもらえるよう間に合いました。不幸中の幸いと言うか、でも本当にうれしいです」と辻は言う。「コンディションどうこうではなくて、出ている時間は数分かもしれないですけど、全力を尽くします」

それでも、辻のプレータイムが数分というのは考えづらい。というのも、現在の代表はシューター不在。それがWindow1での2試合でも痛感した。試合を眺めながら「俺を選んでくれたらなあ、って何度も思いましたね」と辻は笑うが、その時は笑ってはいられなかった。「その分も、このチャイニーズ・タイペイ戦とフィリピン戦に全力でぶつけます」と辻は言う。

川崎ブレイブサンダースではドライブにアシストとプレーの幅を広げている辻だが、今回の2試合で求められるのは最大の武器である3ポイントシュートだ。「それが僕の一番の武器なので。ましてやWindow1では何本か入りましたが、もっと成功数を上げられたら得点につながるので、そこは自分の良さを前面に出していきます」

「まずは思い切って、迷わずシュートを打ちたい」

ケガでずっと日本代表の試合からは遠ざかってきたが、チームへの順応には全く不安がない。ケガをしている間も常に代表合宿には招集されており、リハビリメニューとケガの箇所とは別の部分の身体強化に励みながらも、常にチームの一員としてフリオ・ラマスのバスケットには接してきた。

「公式戦は久しぶりなんですけど、合宿を過ごして代表の戦い方というのは分かっているつもりです」と辻は言う。「Window1でも直前まで合宿でみんなと一緒に過ごしてきました。ディフェンスもオフェンスもシステムの理解度、みんなの反応も前回より相当上がっています」とチームの仕上がりにも手応えを感じている。

どんな起用法をされるか、どれぐらいのプレータイムがもらえるかは「全然分からない」とのことだが、どんなプレーをするかのイメージはしっかりと持っている。長く遠ざかっただけに、辻は代表のゲームに飢えている。「チームに勢いを与えるシュートを決めたいのはもちろんですし、そこから崩せたらどんどんアシストしていきたい。プレースタイル自体は変えなくていいので、まずは思い切って、迷わずシュートを打ちたいですね」

「僕にはすごくチャンスが回ってくると思います」

「最初の1本が決まれば──」と話す辻の口元は緩んでいる。「半笑いじゃないですか」とツッコむと、「すいません、決まるイメージができてしまいました」と辻は言う。イメージでは絶好調。主力選手を何人か欠く今回の代表チームだが、辻の復帰は心強い。

遠慮するつもりは全くない。「どんどんシュートを決めてやろうと思っています。ガードもフォワードも強力だし、良いスクリーンをかけてくれるシステムもあるので、打てるチャンスはたくさんあるはずです。そういった面で、僕にはすごくチャンスが回ってくると思います」

どんな起用法になるかは分からないが、コートに立ったらすぐに流れを呼び込み、それを勢いに変えて日本代表を勝利に導く。長らく試合を外から眺めるしかなかった悔しさをシュートに乗せる辻への期待は高まるばかりだ。