全国で緊急事態宣言が解除され、『普段の生活』が戻りつつある。ただ、新型コロナウイルスの第2波襲来の不安は残り、スポーツ界に今後の影響がないとは言いきれない。昨年のウインターカップで準優勝した福岡大学附属大濠は、新チームとなり今年の優勝を目指すが、大会自体がなくなる可能性もある。チームの主力となる3年生、平松克樹と西田陽成に思いを語ってもらった。
「大濠の輝く姿、泥臭くてカッコ良いプレーを」
──まずは2人の自己紹介からお願いします。
平松 西福岡中学校出身の平松克樹です。今は大濠高校でキャプテンをさせてもらっています。中学校ではメンバーに恵まれて全国大会で優勝できました。昨年はスタメンで出ていてウインターカップで準優勝です。その悔しさから切り替えて、また先輩たちの思いをしっかり受け継いで、この1年をスタートさせました。得意なのは3ポイントシュートとディフェンスです。
西田 海陽中出身の西田陽成です。中学2年生の時に全中ベスト16で、高校は去年のウィンターカップでは3回戦まではスタメンで出場させてもらいました。3兄弟の三男で、上の2人(西田優大、公陽)も大濠の卒業生です。長男から続く道もありましたが、自分の意志で大濠を選びました。2人の兄が活躍するのを見て、自分は全然ダメだと思うこともあるんですけど、1つ年上の公陽とは対人でやり合える時間があったし、そこは本気で勝ちに行くつもりでバチバチやっていました。もう卒業してしまったんですけど、兄を超える気持ちでやっていきます。
平松 同じチームで練習している時に公陽さんに怒られた陽成が引いちゃうこともあったんですけど、1対1の時は本気でやりあっているのが本当に楽しそうで、兄弟は良いなあって思ってました(笑)。ウチも子供は3人なんですが、僕の下に妹が2人なので。
──では、それぞれの良いところ、直してほしいところがあれば教えてください。
平松 僕は自宅で西田は寮ですけど、学校では一緒にいることが多くて仲が良いです。でも結構キレやすい(笑)。短気ってわけじゃないんですけど、イジってるとキレた時に当たりが強いので、イジりがいがあるんだけど本気でキレるのはやめてほしい。でもあまりそうは見えないんですけど真面目だし、チームの中でも頼りにしています。
西田 平松とはいつも一緒にいるし、たまに家にも遊びに行っています。お母さんの料理がめっちゃ美味しいです。
平松 それ、俺の良いところじゃねえし(笑)。
西田 ディフェンスが得意と本人が言っていた通りで、小さいんですが足元でちょこまかする鬱陶しいディフェンスをしてきます。本当に嫌らしいので、試合では頼りになります(笑)。
──新型コロナウイルスにより学校も休校、部活も長く活動停止でした。どのように過ごしていましたか?
平松 午前中はみんなと大濠公園を走ったり、トレーニングして、午後は自宅で学校の課題をやって、夕方からは福岡第一のハーパー(ローレンス・ジュニア)とか卒業した横地(聖真)さんとかいろんな人とオンラインで話したりトレーニングしたりしていました。
西田 僕も午前中は寮生の3年生とランニングをして、午後は片峯先生から小論文の指導を受けたり、トレーニングしてました。
平松「ウィンターカップで決勝に進み、今度は勝ちたい」
──新型コロナウイルスの影響でインターハイの開催がなくなり、終息も見えなくて先行きが不安だったと思います。
西田 インターハイが開催されるかどうか分からない時は、ここまま練習できなかったら試合で身体が全然動かないぞ、という不安がありました。中止が決まって、大会がないのは悔しいんですけどウインターカップまで準備期間があるので、僕たちにはウインターカップしかない、という強い気持ちが出てきました。
平松 インターハイがなくなったことは先生からLINEグループで連絡を受けて、3年生を中心にウインターカップに向けてまたしっかりやっていこうと話しました。僕も連絡を受けた時はちょっとションボリしたんですけど、みんな次の日には切り替えてトレーニングをやっていました。片峯先生とは毎日連絡を取り合っていて、どんなトレーニングをしたか報告していて、「頑張ってるね」とか「しっかり取り組めているね」とかのメッセージで自分たちのモチベーションを上げてくれました。そこはやっぱり感謝していますし、期待にしっかり応えなきゃいけないと思っています。
──体育館が使えずにチーム練習ができない時期が長く続いて、何か練習方法も変わったりしましたか?
平松 最初は寮生がやり始めて、自宅生もやるようになったんですけど、朝早くからランニングして朝日を見に行ったり、夜景を見に行ったりするようになって、それでテンションが上がって「頑張ろうぜ!」とか、青春っぽいことをしています(笑)。
西田 2カ月ぐらいまともに動いていないので、みんな焦りがあると思います。それでもウインターカップまで時間があるので、そこは焦らないように、自分の身体のことを一番に考えていきたいと思います。
──今年の大濠はどんなチームですか? また、ライバルについてはやはり福岡第一ですか?
平松 去年は僕以外のスタメンはみんな大きくて、パスランでインサイドというプレーが多かったですけど、今年は小さいです。全員が3ポイントシュートを打てるので、走ってシュートを狙ってドライブしてキックアウト、という早い展開のバスケットの形を目指しています。
西田 やっぱりライバルは今のところ第一なんですけど、去年は東山、報徳学園、明成が下級生メインのチームで、そのまま今の代になっているので、警戒はしています。
平松 西田が言う通りで、第一は絶対に負けたくない相手ですけど、東山が全国で一番じゃないかって意見をネットで見たりもするので、そこは大濠がウィンターカップでまた決勝まで進んで、今度は勝ちたいです。
西田「仲間の分まで自分たちがプレーで見せたい」
──片峯コーチはみんなの目的は人間形成で、バスケで勝つのはその次と話していました。しかし、実際は全国大会での優勝を強く意識してこの大濠に入学したはずです。これでウインターカップまで中止になったら、と考えるとどういう気持ちですか?
平松 入学した時から自分たちの代でインターハイ、ウィンターカップを優勝するという目標はあります。ウインターカップがなくなったら多分ヘコみますが、高校バスケで終わるわけではないとも思っています。もしそうなっても大学に向けてここで練習を続けると思うし、自分たちの思いは後輩に託して、後輩のための練習相手になって強くなってもらい、自分たちの分まで優勝してもらいたいです。
西田 僕は去年のウインターカップで良い結果を残せなかったので、来年この舞台に戻って悔しさを晴らすって決めました。だからウインターカップがなくなってしまったら、相当落ち込むだろうと正直思います。
──不安は残りますが、ひとまずチーム練習が再開できたのは良いことです。ここからどんな思いでバスケに打ち込みますか?
平松 バスケコートでやれる練習一つひとつに全力で、向上心を持ち続けて取り組みたいです。新型コロナウイルスの問題があって、自分たちがバスケットをできるのは当たり前じゃないと分かりました。今はバスケができることに感謝して、支えてくれる人たちがたくさんいるので、その人たちのことを忘れずに高みを目指して頑張ります。
西田 正直、焦りもあります。でも気持ちにゆとりを持って練習に全力で取り組んで、少しでも早く身体を戻して一つひとつ上手くなれるように、考えながらやっていきたいです。甲子園がなくなった野球部だけじゃなく、剣道や柔道の選手たちも大会がなくなって、そういう思いを持った仲間たちが「バスケ部の応援に行く」と言ってくれているので、彼らの分まで自分たちがプレーで見せていきたいと思います。
平松 新型コロナウイルスの関係で練習ができなかったんですけど、そういうのは関係なくウインターカップで大濠の輝く姿、泥臭くてカッコ良いプレーをしっかりと見せて優勝するつもりなので、みんなに応援してもらいたいですね。
西田 僕は3ポイントシュートが得意なので1試合に4、5本は決められるように練習します。みんなマスクを着けるのは嫌いだと思うけど我慢して、外出から戻った時には手洗い、うがい、消毒を徹底して感染しないように心掛けましょう。そしてウインターカップで大濠を応援してください!