文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

苦戦が続くチームの中で頭角を現す

島根スサノオマジックは先週末に行われた栃木ブレックスとの第2戦で、45-78と完敗を喫した。シーズン最少得点に抑え込まれ、課題ばかりが目立つ一戦となった。だが裏を返せば現状の課題がより明確になったとも言え、やるべきことは見えたはずだ。その課題を修正するカギを握るのが後藤翔平だ。

この試合での後藤は、ベンチスタートながらジョシュ・スコットに次ぐ32分間のプレータイムを得て、8得点を記録。5つのファウルを誘発し、ターンオーバーはわずかに1。試合を通じて劣勢だった島根において、唯一ポジティブな印象を残した。

2月11日の横浜ビー・コルセアーズ戦、後藤は後半からポイントガードとして起用されている。敗れはしたが、鈴木裕紀ヘッドコーチは後藤のパフォーマンスを収穫に挙げていた。またキャプテンの佐藤公威も「純粋で素直な気持ちを持っている。スピードもあるし、チームの流れが悪い時にプッシュできる選手」と評価した。

「ずっと2番、3番でやってきましたが、昨シーズンの金沢(武士団)でも少しポイントガードをやらしてもらっていました」と、後藤自身は複数のポジションをこなすことを苦にしない。

島根はここまで7勝31敗、西宮ストークスと並んでリーグ最低勝率に沈んでいる。だが、この状況は控え選手の後藤にとってプレータイムを獲得する好機でもある。後藤も「僕自身、1番から3番で出ることでプレータイムは増えてきます。今がチャンスだと思って期待に応えたいです」と前向きにとらえている。

島根に求められる打開力と協調性

後藤はチームの課題をこのように語る。「途中まで良くても、一つ崩れてしまうとすべて崩れてしまう。バスケットの個々のうまさはそこまで差があるわけじゃないので、最後まで戦い抜くフィジカルだったりメンタルが必要です」

流れが悪くなった時にどれだけ早く立て直せるかがバスケでは重要であり、強いチームほどそうした時の忍耐力が強い。栃木戦では第3クォーターラストのポゼッションでボールを奪われ、ワンマン速攻を許すという最悪な終わり方をした。そして、その悪い流れを引きずり、第4クォーターの頭から0-21のビッグランを喰らう羽目になった。

鈴木コーチは「ボールが落ち着かない」と頭を抱えた。「ボールプレッシャーをされた時にそこを割っていければいいんですけど、その時にボールを手放したい考えになっている」

後藤も「ボールマンが孤立することが多かったです。もっと2番、3番がもらいに行かないといけなかった」と同じ見解を示した。

島根には佐藤や相馬卓弥など精度の高いシューターはいるが、ドリブルで打開してシュートを決めるタイプの選手を欠く。そのため栃木ディフェンスの圧力の前にボールラインが上がってしまい、オフェンスが組み立てられなかった。

「僕らが表現できないと意味がない」

島根はB2を制した昨シーズンから大幅な選手の入れ替えがあり、鈴木コーチも今シーズンからの新任。そのためケミストリーの構築やコーチの戦術理解に時間がかるのも無理はない。その点、後藤はキャリアをスタートさせた金沢武士団から現在の島根までの3年間ずっと、鈴木コーチの下でプレーしており、指揮官が求めるバスケへの理解力は誰よりも高い。

「いくらコーチが練習で僕らにやりたいことを伝えてくれても、僕らが表現できないと意味がないです。僕は鈴木コーチと3年目なので、みんなに伝えられるようにやっていきたい」

後藤は昨シーズンB3の金沢武士団でプレーしB2昇格に貢献した。B3から飛び級でのB1参戦となり、「フィジカルの部分だったり、バスケットのIQには苦労しました」とB1の洗礼を受けたことを明かす。それでも「試合を重ねるにつれて、やれるという自分は自信ついてきました。そこはB3、B2、B1関係なくどんな時も強い気持ちを持ってやっていきます」と前を向く。

結果がついてこない苦しい状況ではあるが、ブレイク前に栃木と戦い、課題と向き合う時間を持てたことは『不幸中の幸い』だろう。個々のステップアップとともに、鈴木コーチの求めるバスケを深いレベルで理解する必要がある。それには鈴木コーチを一番知る後藤の存在がモノを言うし、彼自身もプレータイムをつかみ取る大きなチャレンジとなる。