鉄壁の守備職人と『ミスター・クラッチ』の行き先は?
NBAではトレードデッドラインを機に各チームの思惑が明確になる。プレーオフ進出当確ライン上にいるチームは他チームの主力、ロールプレーヤーの獲得に躍起になり、再建段階のチームはドラフト指名権と交換で主力を手放し、身軽になろうとする。
優勝候補に挙げられるチームは、このトレードデッドライン後に所属チームと契約バイアウトに合意しフリーエージェントになる腕利き選手を格安で獲得する方針を取ることが多い。今シーズンの後半戦を前に無所属になった、もしくはフリーエージェントになることが濃厚の凄腕ベテラントップ2を挙げるなら、トニー・アレンとジョー・ジョンソンの2人になるだろう。
36歳のアレンは、ペリカンズからブルズにトレードされた後で解雇された。アレンと言えば、NBAトップクラスの守備職人として知られている。10年から7年所属したグリズリーズでは、守備の要として相手チームのエースを徹底的に封じる役割をこなし続けた。その守備のレベルは、過去に6回もNBAオールディフェンシブ・チームに輝いたことが証明している。すでにキャリア晩年に差し掛かっているものの、競争心と守備の力は一向に衰えていない。2008年にセルティックスの優勝に貢献してからNBAの頂上には辿りつけていないが、フリーエージェントになった今、王者ウォリアーズがロスターに空きを作って獲得に乗り出したとしても不思議ではない。
アレンとは正反対のタイプだが、ジョンソンも優勝候補が欲しがる腕利きの一人だ。トレードデッドラインにキャバリアーズ、ジャズ、キングスの間で成立したトレードでキングスに移籍したが、まもなくキングスとのバイアウトが成立すると見られている。ジョンソンの持ち味は、その勝負強さにある。クリッパーズと対戦した昨シーズンのプレーオフ1回戦の第1戦、ジョンソンが試合終了のブザーと同時にフローターをねじ込み、ジャズを勝利に導いた試合は記憶に新しい。特に、試合終盤にジョンソンを使ったアイソレーションは『Iso Jo』という別名を持つほど強力な戦術になっている。
また、昨年4月の時点での話だが、レギュラーシーズン、プレーオフの試合にかかわらず、過去10シーズンで8本ものブザービーターを記録。これはNBA最多の数字だ。『ESPN』は、キングスとのバイアウト成立後、ジョンソンが西カンファレンス2位のロケッツと契約する可能性が高いと伝えた。もしロケッツがジョンソンを加えれば、打倒ウォリアーズに必要な『ラストピース』になるかもしれない。
思いがけずフリーエージェントになったNBA屈指の盾と矛は、果たして後半戦どのチームのジャージーを着ることになるのだろう。注目の行き先は、近日中に決まるはずだ。