文・写真=鈴木栄一

試合開始直後から大暴れのパフォーマンス

東地区の上位対決として注目されたアルバルク東京と川崎ブレイブサンダースの初戦は、94-65と予想外の大差で川崎が制した。この原動力となったのが、1月27日の千葉ジェッツ戦で全治3週間から4週間と見られる足首捻挫を負いながら、驚きの早期復帰を果たした辻直人の活躍だ。

開始約30秒でいきなり3ポイントシュートを沈めると、レイアップを1本挟んで残り約5分半にも10点差とリードを広げる本日2本目の3ポイントシュート。さらにその1分後には、3ポイントシュートでのバスケット・カウントを決めるなどエンジン全開。第1クォーターだけで計12得点を稼ぎ、このクォーターで35-15と突き放す立役者となった。

その後、川崎が常に大量リードを奪う余裕の展開だったこともあってプレータイムを制限したが、約18分の出場で3ポイントシュート4本中4本成功の15得点、3リバウンド3アシストと圧巻のパフォーマンスだった。

負傷した当初の心境を「代表戦も無理だろう。早く治そうと気持ちを切り替え、やれることをしっかりやろうと思いました」と説明する辻だが、ここから「自分で言うのもなんですが驚異的でした(笑)」と自画自賛する回復力で電撃復帰へとこぎつけた。

また、周囲の適切なサポートも大きかったと感謝している。「ケガをした当日、東芝病院に行って高気圧酸素で治療を受けるなど、スタッフの方が迅速な対応をしてくださったので、翌日の腫れ具合を抑えることができました」

「今日よりも明日の方が動けると思います」

「代表合宿に参加して動いている中、今週の試合に行けるのではないかと思いました。今週、チームも帯同しないという方向で進めていたのでうれしい誤算でした」と、代表で予想以上の状態の良さを感じたことで、試合出場を決めた。

その一方で「今週の木曜、金曜がケガをしてからでは初めて参加したチーム練習。練習と試合は当然、違いますし、やはりアルバルクさんはディフェンスが激しいので、そこに対応できるのか不安はありました」と、懸念を抱えながらのティップオフではあった。

それでも「シュートが最初に入ったことで、いつもの形でバスケができました」と最初に放った3ポイントが入る最高の幕開けとなったことで波に乗れた。辻の好調なシュートタッチはチーム全体にも波及し、この試合の川崎はチーム全体で60%を越えるシュート確率をマークした。

これ以上ない形での復帰戦となった辻だが、「完全には治っておらず、体力面、筋力面をもっと上げていきたいです。それは試合を重なるごとに良くなっていくので、今日よりも明日の方が動けると思います」と、コンディションをより上げていくことに自信を見せる。

「あそこで自分がシュートを決めていたら」

本日の試合、川崎にとって東地区首位のA東京に敵地で連勝することができれば、今後に向けて大きな弾みとなる。そのために必要なことを辻は、このように考える。「明日もこんなにシュートが入るのかは分からないです。ただ、同じようにディフェンスで苦しめてあとは思いっきりシュートを打つのが僕たちのバスケです。それができたら今日と同じようにはいかないですが、勝利に近づけると思います」

そして、試合ではチームの勝利第一のみに意識を集中させているが、2月22日のチャイニーズ・タイペイ戦で日の丸をつけて戦うことへの強い意気込みをもちろん持っている。「前回は選ばれなかった。もし選ばれていて、あそこで自分がシュートを決めていたらと悔しい思いをしました。次はなんとしても選ばれたいという気持ちは強いです」

辻が再び代表復帰へのアピールに成功した時、それは川崎の勝利の可能性が高まっていることを意味するはずだ。