文=丸山素行 写真=野口岳彦、B.LEAGUE

ゲームメーク、得点にリバウンドと攻守に奮闘

横浜ビー・コルセアーズは昨日行われた名古屋ダイヤモンドドルフィンズとの第1戦に80-81で敗れた。1点差の敗戦、残り1秒で放った細谷将司のシュートが決まっていれば勝敗は変わっていた。ラストショットを決められなかった細谷は「JP(ジェフリー・パーマー)が最後、僕を信じて託してくれたシュートを外してしまった。まだまだ努力が足りてないというのを痛感した試合でした」と肩を落とした。

しかし、難しい試合を接戦へと持ち込んだのは細谷であり、決して『戦犯』ではない。前半のリードを生み出したのは紛れもなく細谷の影響が大きかった。速攻を繰り出し、自身も第1クォーターで8得点をマークした。「アグレッシブに行けば打開できるポイントがあるし、チームの流れが良くなると思ってたので。それでシュートも入って、ブレイクも出たし、良い形で入ることができました」と細谷は言う。

指揮官の尺野将太も細谷を責める気はなかった。「調子が良く、点も取ってオフェンスリバウンドも取ってゲームをつないでくれた。細谷が(最後)打ったのはチームの狙いとして正解だったと思います」

尺野コーチが言うように、大事な場面でのオフェンスリバウンドも光った。一般的にガードは、速攻をケアするためにリバウンドに参加しないケースが多い。それでも細谷は4つのオフェンスリバウンドを奪った。「ボックスアウトされなかったので、そこは狙った」と細谷は説明した。終盤残り2分を切ってからの2本のオフェンスリバウンドがなければ、この1点差の状況は生まれていない。

「プロとして勝たなければ意味がない」

試合を象徴するシーンは細谷の決まらなかったラストショットになるが、一番の敗因は28失点を喫した第3クォーターの攻防だ。細谷はこう振り返る。「個でやられたのもそうですし、(ジャスティン)バーレルに寄ったところをさばかれて、簡単にゴール下をやられてしまいました。僕も含めて集中力が全くなかった」

「そうなる前に締めなきゃいけない。それがポイントガードのあるべき姿」と細谷は自分を責めた。崩れた時にどれだけ我慢し、立て直せるか。そこでチームをまとめ、動かすのがポイントガードの仕事であり、細谷にとっての課題となる。細谷はこう続ける。「オフェンスに関してもそうですし、ディフェンスでも自分がトップの位置にいるので、ボールプレッシャーをかけて背中で見せたりだとか、僕自身のアタックが必要です」

ここまで自分で責任を背負おうとするのは、純粋に勝利を欲しているからだ。「もちろん過程も大事ですけど、そこはプロとして勝たなければ意味がないので。良いプレーをしても勝たなければ意味がないと思ってます」

「前向きにイジられる日が来るように」

取材をしている途中には、他の取材を終えた先輩たちから「泣いてんちゃう?」、「ヒーローになるにはここ(腕)持ってないと」とイジられた。普通であればなぐさめの言葉を投げかけると思われるが、これが『海賊流』の労りであり、勝ち星がついてこなくてもチームの結束が揺らいでいないことが分かるシーンでもあった。

細谷は「ドンマイじゃなくえぐるのがビーコルです」と苦笑しつつ、「優しいのでみんな考えて言ってくれます。なおさら決めたかったです」と話す。

ヒーローになるチャンスを逃し、細谷にとっては忘れられない試合となった。それでも下を向いていては意味がない。すぐまた次の試合がある。反省すべきところは反省し、ポジティブな姿勢でまた次の試合を全力で勝ちに行くのが『あるべき姿』だ。

「シーズン終了後に、あのシュートがあったから今こうしてビーコルが上位にいれてるんだって。あそこから僕自身もチームも変わって、良い方向に進んでいったターニングポイントになればいいなって思います」と細谷は言う。

「いつかまた、前向きにイジられる日が来るように」という言葉で締めた細谷。最後に笑うためにも、立ち止まってはいられない。