文・写真=鈴木栄一

「試合を経験していくごとに、強さは戻っていく」

年明けに行われた天皇杯、栃木ブレックスは千葉ジェッツに71-76で敗れた。出だしで主導権を握ることができず前半で2桁のビハインドを許すと、第3クォーター終了時には15点と差が広がる。第4クォーターに追い上げを見せたものの『時すでに遅し』という展開だった。

この試合、ジェフ・ギブスは約23分の出場で、12得点8リバウンド2アシスト2スティールをマーク。昨シーズンのファイナルで負った左アキレス腱断裂の重傷から復帰したばかりであることを考えると、上々のパフォーマンスだ。試合には敗れたが、シーズン後半戦において反攻のキーマンとなるのはギブスだと、あらためて感じさせる出来だった。

通常なら復帰まで9カ月から1年かかると言われているアキレス腱断裂。しかしギブスは、ケガを負った5月30日のファイナルから約6カ月半後の12月20日のサンロッカーズ渋谷戦で復帰した。それだけに、天皇杯でのコンディションは80%だった。「100%になるにはあと1カ月かかる。イージーシュートをミスしたりしているしね。今が80%で、残りの20%はコンタクトの強さの部分だ。脚にパワーが戻るまですこし時間が必要だ」と彼は言う。

それでも復帰を急いだのは、チームを何よりも優先したからだ。「チームメートとのコンビネーションを深めることこそ、できるだけ早く復帰した理由だ。より練習を多く重ねていくことで、連携は良くなっていく。試合を経験していくごとに、強さは戻っていくものさ。今はまだ復帰途中で、チーム練習が休みでもジムにいってワークアウトをしているところだ。可能な限り早く100%に戻したい。それがチームをより良くする助けになることは分かっている」

「強く激しいプレーをし、ディフェンス力を取り戻す」

栃木はここまで13勝15敗と借金生活で、東地区6位と苦戦が続いている。複数の選手がチームを去ったことが不振の一番の要因とされるが、ギブスは「キープレーヤーが移籍したが、同じような能力を持つ選手が新たに加入している」と、タレント力の低下を否定する。

むしろ昨シーズンの栃木はオン・ザ・コート「2」の時間帯ではギブスとライアン・ロシターの2人が出ずっぱりの状況が多かったが、今シーズンは3番ポジションをこなせるセドリック・ボーズマンという新戦力が加わっており、そのプラスをギブスは強調する。「ボーズマンは3番、4番タイプの選手。彼が入ることでオフェンスのオプションが増えた。ディフェンスでは、彼が相手のビッグマンとマッチアップしたら周りが助けないといけない」と、ボーズマン加入でオフェンスの多様性が増えたことにギブスは手応えを感じている。

今日からリーグは後半戦がスタートする。チャンピオンシップ出場枠となるワイルドカード2位とのゲーム差は5。まだ32試合あるが、楽観視できる状況ではない。ギブスは言う。「どのチームも昨シーズンより強化されている。東地区は最もタフなカンファレンス。どんな相手に対しても、普通のプレーではなく良いプレーをしないと勝つのは厳しい」

栃木を除く東地区の5チームはすべて勝率5割を上回る。その中で栃木が巻き返していくには「もっと強く激しいプレーをし、ディフェンス力を取り戻す。コートに入った全員が、よりステップアップしていかなければいけない」とギブスは強調する。まずは昨シーズンの強さを支えた堅守を取り戻すこと。そのためには、ギブスの完全復活が特効薬となるのは間違いない。