文・写真=古後登志夫

日本人の母を持つポートランド大のフレッシュマン

昨日、男子日本代表は熊本で強化合宿を実施した。22選手が招集された中で一際注目を集めたのは、ただ一人の代表初選出となった渡辺飛勇(ヒュー・ホグランド)だ。

日本人の母を持つヒューは現在ポートランド大の1年生。日本代表では竹内譲次と並び最高身長となる207cmのサイズを持ち、その高さを生かしたプレーを長所とする。彼自身も「バレーボールをやっていたのでジャンプ力には自信があり、ダンクやリバウンドやシュートブロックが得意です」と語る。

それでも、これまでは未知の存在だった。日本バスケットボール協会の技術委員長を務める東野智弥が発掘し、フリオ・ラマスとともにポートランドまで出向いて日本代表への参加を打診して、今回の合宿参加が実現した。ラマスヘッドコーチは言う。「日本代表でプレーしたいと即答してくれたその気持ちがすごく大事だと思う。身長の割りには身体能力がすごくあって速い。選手自身もすごく期待して代表合宿に来てくれた。日本のバスケにフィットする人材だ」

ワンステップで90cmオーバーの跳躍力

身長ばかりに目が行くが、それ以上に驚かされるのがジャンプ力だ。「ポートランド大学での最初のテストではスタンディングで32インチ(81cm)、ワンステップで36インチ(91cm)でした」とヒューは事もなげに話す。この跳躍力はバレーボールで培ったもの。もともとはバレーボールをやっており、バスケに本格的に取り組むようになってまだ1年あまりなのだ。

「バスケ自体はずっとプレーしていましたが、8年生から(中2)バレーボールに集中するようになりました。しかしバレーボールで大学に進むことができず、バスケットに変えました」と彼は言う。こうしてバスケットボールプレーヤーとしてポートランド大から奨学金のオファーを得て、現在に至る。

それだけにスキルが足りないし、インサイドプレーヤー特有の動きもまだ覚えなければならない。高さはあるが19歳らしくまだ線は細く、これからフィジカルを鍛える必要もある。だが、それらはすべてこれから伸ばすことができる要素。身長を努力で伸ばすことはできないし、バレーボールで培った跳躍力も大きな武器だ。ヒューもそれを自覚し、「今はスキルがないですが、ショットブロックやリバウンドで2020年に向けて貢献していきたい」と『2年半後』に目標を定めている。

初めて参加した日本代表合宿の感想は「スキルのあるビッグマンが多く、強くて速い印象です。アメリカではあまりそういう選手がいないので良い経験になりました」というもの。「ポストムーブも得意ですが今日はあまりできませんでした。でも自分の強みは見せられたと思います」

「日本を勝たせられるような選手になりたい」

日本でプレーするのは初めてだが、これまでも日本には特別な思いがあったことを明かしてくれた。「小さい頃から日本には特別な思いがあったので、日本のためにプレーできるというのはすごく名誉に思いますし、夢が叶いました」

来月にはワールドカップ予選という『負けられない2試合』が待ち受ける。「選ばれたとしたら今自分が持っているものを全部出し切って、全力でチームをサポートしたいです」と覚悟を見せた。そして若き原石は「日本を勝たせられるような選手になりたい」と明確な目標を口にした。

長く日本のインサイドを牽引してきた竹内兄弟と太田敦也は今年で33歳と、もはやベテランの域にある。彼らに追い付き、追い越していくビッグマンの育成は大きな課題だったが、今回新たに楽しみな存在が登場した。ポートランド大でレッドシャツ(出場登録なし)となったこの1年間は、ヒューにとって今後のバスケ人生を支える土台を築く時期で、すべてが貴重な経験だ。日本代表への参加が良い経験となって、さらに大きく飛躍することを期待したい。