文=丸山素行 写真=鈴木栄一

「悪いところはいっぱいありますよ」

天皇杯決勝は千葉ジェッツの連覇に終わった。決勝で敗れた三河にとっては、実力で押し切られたというよりも『自滅』という印象が強い。万全の状態で大会を迎え、準々決勝と準決勝では攻守に盤石のパフォーマンスを見せていた。だが、ファイナルの舞台で自分たちを見失ってしまったのだ。前半を終えて42-47、この程度のビハインドで慌てる必要はなかったはず。それでも第3クォーターに突如として歯車が狂い、そこを千葉に突かれた。

三河のスコアラー、金丸晃輔も後半の出だしを敗因に挙げた。「3クォーターの入りですよね。全然大丈夫な点差なので、本当はあそこでがっちりディフェンスをやらなきゃいけなかった。あそこの3ポイント、すべては第3クォーターです」

ダニエル・オルトン、比江島慎の3ポイントシュートが決まり反撃ムードとなったが、小野龍猛の連続3ポイントシュートによって流れは断ち切られた。そればかりか続く約6分間で0-20という致命的なランを喰らった。金丸はこの『ブラックアウト』の時間帯をこう振り返る。「ディフェンスをしてミスを誘発して走る。ほぼそれです。千葉がやってることは前半と変わらなかったですが、ウチの戻りが遅かった。その後に我慢して冷静にオフェンスをやれば良かったんですけど、イージーに得点されてオフェンスに引きずってしまいました」

「ボールが回らなくなり、最終的には1on1になってタフショットを打たされ、逆に速攻を食らって……。一番ダメなバスケットをしていました。悪いところはいっぱいありますよ」とネガティブな言葉が次々と出てきた。

ボールに触れないフラストレーション

両チーム最長となる35分間プレーした金丸は、立ち上がりの連続得点で三河のオフェンスを牽引するかに見えたが、その後は伸び悩んで13得点。「うまくスクリーンを使ってノーマークになる数は少なかった」と、千葉の徹底的なフェイスガードやスイッチディフェンスに手を焼いたことを認めた。

普段であれば表情を変えずに、いかにノーマークを作って得点を取るかに集中する金丸だが、「ボールに触れないというのは一番嫌なことなので、フラストレーションはありました」と振り返る。

マッチアップしたのは小野龍猛であり、アキ・チェンバースである。アキはしつこいディフェンスに定評がある選手だし、小野はオフェンス時のポストアップで金丸をとことん苦しめた。「身体をぶつけて体力を削る狙いでした」と小野自身が明かしたように、小野のポストアップは千葉の攻め手の一つであると同時に、金丸を消耗させる手段でもあった。

「絶対ポストアップくると思ってました」と金丸。しかし「ボールを持たれないように頑張ってたんですけど、持たれて押し込まれました」と小野とのマッチアップを振り返った。千葉の策にはまって消耗した上に、追う展開が続いてベンチで一息入れることもできなかった。こうして金丸の得点は伸び悩んだ。

この敗戦をどうつなげていくか

「オフェンスで引きずってしまって、自分たちでリズムを壊してしまった。たまにあるんです」と金丸は言うが、もう大会が終わってしまった以上、この教訓をどう生かすかが問題となる。レギュラーシーズン後半戦はすぐに始まる。現在西地区首位を独走している三河だが、チャンピオンシップでの戦いを見据えれば、昨日のような自滅はあってはならない。

「粘らないといけないところで粘れなかったり、周りが見えなくなってインサイドが孤立してしまった」と課題は明確になっている。手痛い教訓を得て、三河はどう変わっていくのだろうか。