文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

第3クォーターのブラックアウトに泣いたSR渋谷

サンロッカーズ渋谷vs川崎ブレイブサンダースの大晦日決戦。

序盤はリーグ2位の堅守を誇るSR渋谷のペース。強度の高いマンツーマンディフェンスでタフショットを打たせ、24秒バイオレーションを誘発するなど守備が目立った。オフェンスではボールがよく回り、デザインされたプレーからノーマークを作り出す。山内盛久が2本の3ポイントシュートを沈め、ジョシュ・ハレルソンの3ポイントシュートが決まり、開始5分で13-6とリードした。

だが川崎はタイムアウトを機に長谷川技の3ポイントシュートで反撃するも、残り1分を切って特別指定選手の阿部諒が3ポイントシュートを決めてSR渋谷が18-16とリードを保つ。その後、第2クォーターは互いに決め手を欠く展開に。

試合が動いたのは39-39の同点で迎えた第3クォーターだった。ここまでSR渋谷のディフェンスに苦戦していた川崎だったが、ピック&ロールからズレをうまく作り出していく。特に篠山竜青は2本の3ポイントシュートを含む10得点3アシストをこのクォーターで記録し、得点だけでなくゲームメークでもチームに勢いをもたらした。

一方、SR渋谷は高確率でシュートを決められたことでオフェンスにリズムが生まれず、シュートセレクションが悪くなりトランジションも影を潜めた。残り2分30秒、篠山の3ポイントシュートが決まり点差は2桁に。その後もシュートセレクションが悪いSR渋谷を尻目に得点を積み上げ、68-52と大量16点のリードを奪い最終クォーターを迎えた。

SR渋谷はロバート・サクレとハレルソンによるインサイドを強調して反撃を試みるが、強度の上がった川崎ディフェンスに対しリングへアタックできず、ベンドラメ礼生のシュートがエアボールになるなど、ガード陣の得点が伸び悩んだ。対する川崎は的を絞らせないチームオフェンスが機能。終盤は危なげない試合運びで、86-68の完勝を収めた。

チームの潤滑油となった鎌田の存在

北卓也ヘッドコーチは勝因となった第3クォーターをこう振り返った。「今日は篠山と藤井(祐眞)が3ポイントを高確率で決めてくれて、第3クォーターは脅威のシュートパーセンテージだったと思います。そこでリードを16点奪えたことが勝因です」

また『影の功労者』として鎌田裕也の名前を挙げた。「鎌田がインサイドで外国籍選手と張り合って気持ち良くプレーさせないことがチームとしてうまく機能していた」

またオフェンス面でも、我慢強くボールを動かしてチャンスを作りだす上で、鎌田のスクリーンが大いに役立っていた。鎌田自身も「オフェンスはボールの回りを止めないように動くというのを意識しています。スクリーンは自分のこの大きな身体を生かして、良い壁になってそれでオープンなシュートが打てているので、これからも続けていきたいです」と満足気だ。

点の取り合いは「自分たちの展開ではない」

一方、敗れたSR渋谷の勝久ジェフリーヘッドコーチは第3クォーターをこのように振り返った。「ピック&ロールディフェンスだと思います。我々はディフェンスで相手を60点台、70点台前半に抑えないといけない。ここまでハイスコアのゲームになると自分たちの展開ではないのでディフェンスで相手を抑えるということに軸を持たないといけない

また、ターンオーバーは17と川崎の倍以上。「大事なところでのターンオーバーが目立ちました。チームで17あって連携ミスもありますし、焦りもあります。チームで作ったシュートであれば、トランジションディフェンスが準備できている形ですので、相手に速攻もやられません。でもターンオーバーから走られたり、タフなシュートを打たされて、ディフェンスで本来つく選手が別のところにいてミスマッチができたり、そういうシーンが第3クォーターに目立ちました」

川崎に連敗し順位を落としたSR渋谷。それでもシーズンの約半分が終了し、故障者が相次ぐ中での18勝10敗は上々と言える。だが激戦の東地区に所属している以上、チャンピオンシップ出場のためにはこの成績を維持する必要があり、同地区対決での連敗は避けなければならない。