宇都直樹

Bリーグは新型コロナウイルスの影響により、リーグ戦の3分の2を消化したところでシーズンを終了した。富山グラウジーズは2年連続のチャンピオンシップ出場に向けて追い上げを見せていた中での終了となり、キャプテンの宇都直輝は「僕たちもまだ整理がついていない」とシーズン終了直後にコメントしていた。最後の試合から約1カ月が経過した今、今シーズンの振り返りと今の心境を聞いた。

「チームは盛り上がっても、観客がいないと上乗せがない」

──新型コロナウイルスの影響により、富山は17勝24敗、19試合を残してシーズン終了となりました。

開幕4試合目でジョシュ(ジョシュア・スミス)がケガで離脱してしまって、ゴール下の起点がない状態でシーズンを迎えました。ただジョシュが抜けたことで、オフェンス面ではボールが動くようになりましたね。全員でボールを動かしてみんなで得点を取るスタイルに変わったことは良かったと思います。

ディフェンス面も噛み合ってきて、最後の10試合の失点数ではリーグの上位に入ることができました。攻守ともに噛み合ってきて、これからが楽しみという時にシーズンが終わってしまったのは残念です。

──宇都選手個人としてはいかがですか? 12月の中旬には左肩のケガで約1カ月の戦線離脱がありました。

プロに入って6年目ですが、長期離脱したこと自体が初めてでした。ただ、ケガをしている時でも自分に何ができるのか、プレーができない時のメンタリティやモチベーションの保ち方、そしてケガが治ってチームにどのように溶け込んでいくのか、という経験ができたことは成長にも繋がったと思います。

あとは、僕はもともとテクニカルファウルが多かったんですけど、今シーズンは33試合に出場してテクニカルが0回でした。そこはキャプテンとして立ち振る舞うこともできて、成長できた部分かなと思います。

──チームとしては年明け以降、勝ち星が増え始めていました。中地区2位のシーホース三河とは1ゲーム差で、自力でのチャンピオンシップ出場が狙える状況でのシーズン終了となりました。

もちろんシーズン終了は悔しいです。ただ、「このまま試合が続いていたらチャンピオンシップに行けたかもしれないのに」という悔しさではないです。チャンピオンシップに出場するためのチャレンジができなかった悔しさがすごく残っています。

でも僕たちのエゴでバスケットができるわけではありません。選手、審判、テーブルオフィシャル、モッパー、設営スタッフ、フロントスタッフ、そして相手チームがいないと試合はできません。それに無観客試合を経験して、あらためて観客がいないと試合が成り立たないと思いました。チームは盛り上がっても、観客がいないと上乗せがないんですよ。アウェーの雰囲気をいつもは肌で感じるのに、それもない。無観客の2試合は本当に難しかったですね。

シーズン終了が決まった直後はなかなか気持ちの整理がつかなかったですが、今はついています。お客さんも僕たちも健康が大事で、今はコロナに感染しないことが一番です。悔しくないわけではないけど、そういうことを考えるとリーグの判断は良かったと思っています。

宇都直樹

「オフシーズンが選手として成長できる期間」

──無観客試合から約1カ月、そしてリーグ終了が決まって10日ほど経ちますが、今はどのように過ごしていますか?

シーズン終了の発表を受けるまでは、まだ先のことが分からなかったのでチームとして活動していました。3月最後の金曜日にシーズン終了が決まって、翌月曜日にチームで最後のミーティングを行いました。それからは三密にならないようにローテーションで個人ワークアウトをしています。コーチとの1対1のワークアウトで、30分ごとにコーチ2人と選手2人が体育館に来て、時間をずらすなどの工夫をしています。

──試合がなくなり、来シーズン開幕も見えない状況ですが、モチベーションを保つのは難しくないですか?

実は今はモチベーションが結構高いんですよ。なくなってしまった20試合分のエネルギーをすべて自分のトレーニングや技術向上のために使えるので、この時間を有意義に使っています。僕はオフシーズンが選手として成長できる期間だと思っています。シーズン中に成長するには試合に出ていないといけません。ただ試合では思い切ってチャレンジするようなプレーはなかなかできないんですよね。そういう面でも、オフシーズンにはたくさんミスをしながら練習ができるので、その時間が増えたとポジティブにとらえています。

ただ富山県も感染者数が増えてきているので、4月13日からは僕たちもチームの方針で完全自粛となります。その期間は体育館に来ることもできないので、自宅でトレーニングをしたりランニングをしようと思っています。

宇都直樹

「ブースターは最高だと感じることができた」

──宇都選手のSNSでお子さんの写真をよく見ますが、家族との時間を大切にしているように感じます。今はご家族との時間も増えていかがですか? また父親としては小さなお子さんがいると心配な点もあると思います。

気分転換のために、ちょっとした買い物に子供を連れて行くことはありますが、モノに触らせないようにずっと抱っこしています。普段はベビーカーに乗せたり、歩かせますが、まだ小さいのでマスクを嫌がってつけられないんですよ。なので子供は基本的には家から出さないようにしていますね。

今は家族とずっと一緒にいられるので良い時間を過ごしています。シーズン中はアウェーが続くと、奥さんが一人で子供を見るのも大変だと思うので、実家に連れて行ってあげたりするんです。ただそうなると僕が富山で2週間ぐらい一人なんですよね。そう思うと、今はずっと一緒にいられるので、子供にとっても良い時間になっていると思います。

──それでは最後にグラウジーズロスのファンの皆さんへのメッセージをお願いします。

今シーズンを経て、あらためてファンの方のありがたみを感じました。ファンの方の中にはシーズン中に1試合しか見られない方もいると思います。その1試合で調子が悪いプレーを見せてしまったら残念に思われてしまうので、1試合1試合を大切に、より良いパフォーマンスができるように準備をしたいです。

今シーズンもケガで離脱する選手がいたり、いろいろとありましたが、最後まで応援してくれたファンの方には『ありがとうございました』と伝えたいです。毎シーズン、グラウジーズブースターは最高だなと思っているんですが、今シーズンもそれを感じることができました。今はなかなかファンの方と交流できませんが、この間なんとなくインスタライブをしてみたら結構反響もあって、1000人ぐらいの方が見てくれたんです。そこで『元気が出ました』というコメントもいただいたので、引き続きやっていきたいと思います。