市岡ショーン

Bリーグはレギュラーシーズンの3分の2を消化したところで中止となった。これからポストシーズンに向けて緊張感が高まる状況で急に試合がなくなったことで、選手たちはモチベーションを向ける先を失い、気落ちしているに違いない。特に、今シーズンに調子を上げていた選手はなおさらだ。ここではプレータイムを指標として、今シーズンに大きなステップアップを見せていた選手のパフォーマンスを振り返る。

外国籍選手の持ち味を引き出す『黒子役』に

昨シーズンのレバンガ北海道は開幕前に震災に見舞われた影響もあり、10勝50敗で残留プレーオフに回ることになった。仕切り直しとなった今シーズンも激戦の東地区で苦戦を強いられたものの、40試合を消化して13勝27敗と勝率はほぼ倍増となり、中止時点で残留プレーオフを回避できる全体14位につけていた。

内海知秀ヘッドコーチは昨シーズンの課題である得点力不足を手持ちの駒でいかに解決するかを考えた末、新加入のスコアラー、マーキース・カミングスの3番ポジション起用を決めた。これに伴い、中心選手である桜井良太のプレータイムが激減するのだが、代わりに市岡は4番ポジションを託され、プレータイムを前年の平均12分から19分へと伸ばすことになる。

守備の負担を減らされ、3番ポジションの日本人選手とのマッチアップで得点を奪うことに集中できたカミングスは23.3得点をマーク。規定試合数に達しなかったため得点王争いには入らなかったが、これはリーグトップのダバンテ・ガードナー(23.4得点)に次ぎ、ニック・ファジーカス(23.2得点)を上回る数字だ。

このようにカミングス、同じく外国籍選手のケネディ・ミークス(21.0得点)、マーク・トラソリーニ(17.8得点)が活躍できる環境を作り出したのが市岡だ。相手チームのエースを止めるのが彼の役割。スマートにプレーするだけでは止められず、必然的にファウルがかさんだが、チームメートの負担を減らすために自分の役割をこなし続けた。4番ポジションを市岡とファイ・パプ月瑠の2人体制で身体を張り続けた結果が、昨シーズンからの成績アップの大きな要因となった。

内海ヘッドコーチはまだシーズン序盤の段階で「彼だけに限った話ではありませんが、ウチは全員が自分のためじゃなくチームのためにプレーしてくれています。彼はその姿勢をすごく出してくれる」と、市岡の姿勢を高く買っていた。

これまでほとんど経験のなかった先発起用も増え(16試合)、スタッツも軒並み伸びた。大量得点を奪うことこそなかったが、スクリーナーとして味方をフリーにするだけでなく、そこからのダイブでパスを呼び込んで得点する形も試合を重ねるごとに精度を増していた。残留プレーオフ回避へハードな戦いとなるシーズン終盤、市岡のエネルギッシュで献身的なプレーはより評価されただろうと予想されるだけに、試合がなくなったのは残念だ。

それでも、自己犠牲を厭わないプレーに徹して周囲の選手を輝かせ、それで自分の評価を高めたことに彼自身も手応えを得ていたはず。来シーズンにはさらなるステップアップ、さらには『主役』としてのパフォーマンスにも期待したい。